「東井義雄について語る」米田啓祐 但馬コネクション(#71)

但馬コネクション4月は教育者・東井義雄氏。ゲストは米田啓祐氏

但馬出身の偉人として東井義雄氏の名を挙げる人も多い。
「村を育てる学力」は東井義雄さんの有名な教育方針。

ゲストの米田啓祐氏は、東井義雄さんが八鹿小学校(兵庫県養父市八鹿町)の校長として着任した1964年(昭和39年)に新米教諭として勤務されていました。

実際に東井義雄さんの人となりを語っていただく

このセッションに当たって、一番関心を持っていたのは、「村を育てる学力」って、具体的にどんな教育なんだろうか、ということでした。

それは教育理念、方法論ではなく、東井義雄さんの教師として、校長として日々子どもたちや教員に接する態度やアドバイスにあるようだ。一方的な結論の押し付けでなかく、本質を鋭く見抜き、それを相手(教員であったり、生徒であったり)に合わせて話しかける。

全教員が提出する「週録」(1週間の出来事、実践記録、子どもたちの学習進捗など)に目を通し、激励、疑問、助言、教育のあり方について返事を書き、問いかける。

そのやりとりを「校長便り」として刊行したのが「培其根」(ばいきこん)というガリ版刷りの通信。当初は校内教員のみに配布されていたが、評判を呼び後には1000部を越す発刊となる。この「培其根」が教育者としての東井義雄を世に知らしめることになったようだ。

「村を育てる学力」とは、子どもの生きがいを育てる学力。村に縛りつけるのではなく、子ども一人ひとりの命を大切にし、個性を伸ばし、地域を豊かにする知恵と愛着を育むこと、と理解。

1964年(昭和39年)に八鹿小学校の校長に着任した時の挨拶で述べた言葉に答えがあるように思う。
「だってぼくたちの学校だもん」

「なぜ?」「なぜならば」「〜すべき」の理屈ではない。

「だって、ぼくたちの村だもん」

「ドイツの芸術文化環境から考える但馬の課題と展望」 藤野一夫 但馬コネクション(#70)

但馬コネクション3月は、藤野一夫氏(芸術文化観光専門職大学副学長、神戸大学名誉教授)をお迎えする。テーマは「文化」。長年に渡ってドイツの文化政策を調査し、ドイツ文化に詳しく、特にご本人も音楽を愛し、ヨーロッパの演奏家とも親しいお付き合いをされている。

この日は、今冬最後(?)の寒気来襲で雪が降る寒い1日。急遽、灯油のストーブも持ち込む。第二部はストーブを囲みながらの意見交換。

大好評の手作りケーキとお菓子。作るのは会場のシェアハウス「江原101」の住民であり、但馬コネクションのスタッフである芸術軍歌観光専門職大学(CAT)の学生たち。大好評!

記録は但馬コネクションのサイトで掲載予定。

「ジェンダー平等の実現に向けて」大崎麻子・薗田綾子 但馬コネクション(#69)

但馬コネクション11月は、ジェンダー・ギャップ解消(ジェンダー平等)について。ゲストは大崎麻子さんと薗田綾子さん。最初に、それぞれのジェンダー問題に関わるきっかけなど、ご自身の生い立ち、キャリアなど個人的な体験談を熱くホンネで語っていただきました。

大崎麻子さんのジェンダー平等は、
国連人権宣言「すべての人間は生まれながらにして基本的人権を有し、
差別されることなく自由である」
に基づくもの、という指摘は本質をついたもので、腑に落ちました。

「女性活躍」「女性比率の向上」などの視点では、返ってボヤけてしまう。

第2部のティータイムでは、薗田さんのリードで参加者の体験や意見を語り合う。
詳しくは、但馬コネクションHPで記録をアップする予定です。

「茶の湯の魅力」中田裕美子 但馬コネクション(#68)

但馬コネクション10月は、ゲストに(但馬コネクションのスタッフ)中田裕美子(草春会主宰、茶道裏千家准教授、茶道検定1級、大師会会員)を迎えて「茶の湯の魅力」をテーマに開催。

茶の湯がテーマなので、セッション開始2時間前に茶席を準備し、実際に抹茶を楽しんでいただく。再開後はシェアハウス「江原_101」を会場としていたので、久しぶりのドーモ・キニャーナに参加者様をご案内する。(セッション会場は「江原_101」)

会場準備が整い、茶会の打ち合わせをする顧問たち。
(但馬コネクションではお世話するスタッフのことを「顧問」と呼んでいる。自分たちも企画し、実行し、楽しむことが第一という思いから)

茶席は、ドーモ・キニャーナの和室。亭主は陶芸家の光藤さん。光藤さんはこのドーモ・キニャーナでの茶道稽古に通ってきている仲間です。

来た方からお席に入っていただく。後見は今回のゲストスピーチを行なう中田裕美子。

茶の湯の基本であり、楽しみは「茶事」である。中国から茶の伝来はいつなのか。嵯峨天皇(平安時代)や実朝と栄西(鎌倉時代)について書かれた文献をもとに解説。

「侘び茶」を大成したのは利休ではなく、その前後の時代に様々な茶人(大名、商人なども含めて)に拠るもの。「侘び」という言葉自体、江戸時代に出てきた言葉でもある。

近代、現代の茶の湯がどのように受け継がれて来たか、そしてこれからの茶の湯(茶道)は、どのようになっていくのだろうか、と茶の湯の話は続く。(詳しくは後日、但馬コネクションのホームページで記録をアップします)

セッション第2部では、点て出しで薄茶を振る舞い、茶の湯についての感想、質問などを語り合う。

「俳句、その速度と量」岩田奎氏(俳人)但馬コネクション(#67)

9月の但馬コネクションは、ゲストとして岩田奎君にお願いをしました。

「君」と呼ばせてもらうのは、2021年岩田君が大学4年生の時に、半年ほど豊岡に移住。活動中に芸術文化観光専門職大学(CAT)の学生と知り合い意気投合。5人の仲間で住む家を探している時に私と出会う。そんな経緯から、あれよあれよと会場となっているシェアハウス「江原_101」ができるきっかけとなった。言わば、岩田君の「家」でもある。

セッションは俳句愛好家も集まり会場は満席。前半は岩田君にとっての「俳句とは」の話。

スピーチの出だしに「俳句に心なんかいりません」との衝撃的な話に会場から「うぇ〜?」との驚きともため息ともつかぬ声が漏れる。私たちが通常思い描いている俳句の概念が覆される。

スマホで句を作る参加者(みんな真剣)

タイトルの「俳句、その速度と量」の解説のあった後、参加者も即興で俳句を作る。岩田君が設定したGoogleフォームをダウンロードし、そこに閃いた句を機関銃のように書き入れる。お題は「渡り鳥」。わずか15分ぐらいの間にみなさんから200以上の句が集まる。

その句(誰の句かは判らない)の中から岩田君が「面白い」と思った句を選別しながら、俳句への興味を引き出していく。みなさんの俳句の既成の概念、印象が変わった瞬間でもありました。

シェアハウス「江原_101」でのイベントのお知らせする住民学生

第二部のティーパーティに移る前に、豊岡演劇祭関連の公演、イベントの広報宣伝。このシェアハウス「江原_101」でも演劇祭期間中に、ミーティングスポットとして、たくさんのワークショップやトークイベントが予定されている。

「だいかい文庫から始まるケアするまちのデザイン 〜つながりを処方する社会的処方の取り組み〜」守本陽一氏 但馬コネクション(#66)

7月の但馬コネクションは「だいかい文庫」主宰であり医師の守本陽一氏。

「だいかい文庫」の取り組みは、以前から注目していました。
『一箱本棚オーナー制度』(本を貸し出す側が費用負担して本棚を運営。借りる人は手続きをすれば無料で借りられる)、
『YATAI CAFE』(屋台で街に繰り出し、コーヒーを振る舞う。そのひと時の出会い、コミュニケーションを通じて地域のこと、健康のことなど語り合う)、
『豊岡市商店街の空き店舗を改装利用』(シャッター通り化している市内最大の商店街利用の好例となる)。

一つ一つは地味で小さなことかもしれないが、それを口コミなどでコツコツと積み重ねていく、そのプロセスがじわじわと市民の中に浸透し、地域の文化、健康、医療的役割を重層的に支えていく。

守本氏の医師としての学び、医療現場での体験、先人(先輩)の活動を参考にしながら、守本氏の高い志あっての取り組みだと改めて強く思いました。

『居場所の相談所』『みんなのだいかい大学』『ゆるいつながり研究所』へと、「だいかい文庫」の取り組みは留まることなく展開しています。

ぜひ、訪ねてみましょう。

「すぐそこに演劇があるまち」(豊岡市ガイドブック)

豊岡市のガイドブック「すぐそこに演劇があるまち」が面白い。

表紙からしてグッと惹き付けられる。今春、演劇のまちづくりを標榜する豊岡市が現在取り組んでいる活動や施設を紹介する冊子。市民の理解を得るのはもちろんのこと、Uターンや移住を検討している人たちへのアピールを狙っている。

「城崎国際アートセンター」(KIAC)「芸術文化観光専門職大学」(CAT)「江原河畔劇場」などの演劇関連施設と共に、CAT学生たちが生活するシェアハウス「江原_101」も紹介していただきました。

衝撃の表紙なので、やはり表と裏を開いてご紹介したい。

昨年9月、豊岡演劇祭公演『最後の芸者たち』(ハイドロブラスト/太田信吾・竹中香子)。私もKIACで観劇しましたが、最も印象に残った演目の一つ。太田信吾さん「芸者文化の未来を探る」、竹中香子さん『身体を「記録媒体」として活用する』のメッセージ。すっかりファンになってしまいました。

さてさて本題(?)のシェアハウス。
昨年8月にオープンしたCAT学生のシェアハウス「江原_101」(豊岡市日高町江原101)を紹介していただきました。

近所にあった空き家を改修。それぞれの個室、2階部分を吹き抜けにしたスタジオ、みんなで集まって料理をしたり談笑できるキッチンスペースを完備。

相手希望により購入した空き家、一緒に住もうとしている学生5人組、改修設計できる建築家との偶然の出会いとタイミングで実現しました。

共有部分は学生たちの憩いの場であり稽古場。今後は、住んでいる学生が中心になって地域の人や学生たちを招いてイベントも企画する予定。今年の豊岡演劇祭でのフリンジや演劇ファンの人たちの交流できる場としても提供できればと考えています。

すでに、但馬コネクションをこのスタジオを利用して開催しています。

学生たちが卒業後も自由に戻って来られる場所となるのが一番の楽しみです。
どうぞ、一度立ち寄ってみてください。

「共に暮らし柿落とす」但馬コネクション(No.64)

但馬コネクション5月セッションは、この会場であるシェアハウス「江原_101」に住む芸術文化観光専門職大学(CAT)の学生たち7名が主役。

全国から集まってきているCATの学生たち。自己紹介を兼ねて、彼らの生い立ち、大学での学び、これから目指すところを語ってもらおうとお願いをした。

さすがに演劇専攻だけあって、単に「述べる」のではなく、趣向を凝らしたパフォーマンスで応えてくれました。

自室のドアの前でPC打ちながら画面で紹介する学生。会場の外のから即興で書いた自己紹介をマイクを使って屋内の参加者に届ける学生。

1階の吹き抜け天井を通して2階から見下ろしながら見たり、聞いたりもできる。

キッチンを使って、お茶を淹れながら語る学生。第2部のティータイムでは、参加者全員がスタジオ(1階中央のスペース)に集まって交流。

参加者にはこの春入学したての3期生の学生もいる。まだ不慣れな豊岡での生活を考慮して、地元の参加者や但馬コネクションの顧問(スタッフ)の職業なども紹介しました。

何を学ぶのかの志と目的をしっかりと持って豊岡へやってきたCATの学生たち。ハキハキと物おじすることなく、自分を語る姿がとても頼もしく感じたセッションでした。

「建築・映像・演劇〜空間と時間を往来しながら」但馬コネクション(No.63)

但馬コネクション4月セッションは、建築家集団 GARAGE(ガラージュ)。タイトルは「建築・映像・演劇〜空間と時間を往来しながら」。早稲田大学建築科、理工学術院建築学(大学院)を修了した同期生3名で2021年に設立。事務所は豊岡市と東京に構えながら活動する。

演劇の鈴木忠志さんは40年以上も前に東京から富山県利賀村に活動拠点を移し、平田オリザさんは劇団も自らも拠点を豊岡市に移す。建築の象設計集団も北海道十勝と東京の二拠点で事務所を構える。

GARAGEも、地域(地方文化)に精通し、世界を相手に活躍する建築家集団になることを期待しています。

但馬コネクションの会場となるシェアハウス「江原_101」(えばらすぺーすいちまるいち)は、GARAGEの改修設計により昨夏オープン。これはまさに自作自演かな?

「スタジオ」と名付けた1階の吹き抜けの会場は満席。
第1部の90分間がGARAGEのプレゼン。
熱心に話を聴きいる会場の空気が印象的だ。

第2部は、ティータイム(茶話会)。
会場「江原_101」が主役でもあるので、参加者の皆さんには、キッチンも見学していただきながら飲み物をお渡しする。

ティータイムのお菓子は全て手づくり。
「再開・但馬コネクション」は、ここに住むCAT学生たち全員にスタッフ(内輪では「顧問」と呼んでいます)として加わってもらい、運営していきます。

第2部のティーパーティの様子。
それぞれのテーブルで、また歩き回りながら、会話が弾みます。

詳しくは後日、但馬コネクションホームページにも記録を掲載いたします。

再開! 但馬コネクション

丸3年の中断を経て、但馬コネクションが再開されました。

2019年12月のジャズライブを最後に、コロナ対策で中断を余儀なくされていましたが、コロナ対策分類も変わろうとしている中、再開を決断。

会場はシェアハウス「江原_101」に移す。古い民家をリフォームして昨年8月にオープン。CATの学生たちが住み、共有スペース「スタジオ」を利用する。約50人は収容できる空間。

コロナ前まで、61回を重ねてきたセッションでは、第2部は「ワイン片手に語り合う」形式で交流を重ねてきたが、再開後は、午後のティータイムをイメージして、手作りのケーキ、クッキーとお茶をいただきながら交流、意見交換をする形式。

3年ぶりなので「久しぶり!」と声を交わす人たち、「初めまして」と挨拶する人たち。地域では、この3年の間に劇団青年団が江原河畔劇場のオープンと同時に引っ越してきたり、2021年には芸術文化観光専門職大学が開学したり。

中断していた但馬コネクション再開は、地域の新しい顔合わせ、交流が生まれる場としての役割も果たせそうだ。