“Crazy Camel”  大駱駝艦・天賦典式

見るからに大駱駝艦ですね。

ヴィヴァルディの「四季」にのせて、二人の女学生と一人の男子学生の春の目覚めの景色と、その内面を金粉男女が表現する。(略)
老若男女が淡い恋心を抱いた日々を想い出し、、、

「クレイジーキャメル」プログラム 麿赤兒挨拶文より

昔、学生時代のアングラ劇団、小劇場華やかりし頃、役者さんがお金稼ぎで「金粉ショー」で全国の歓楽街、温泉街を訪ね歩いた、と言った話をよく聞いた。特に唐十郎の赤テントは有名な話だ。

それはともかくとして、今回の「クレイジーキャメル」の舞台は、ストーリーもシンプルで整然としていて(舞踏として珍しく)爽やかな気分で鑑賞。
なんかやる気というか、元気というか、体内リズムというか、好回転し始める。

会場は神戸文化ホール(中ホール)。
ホール天井に吊るしてある「大駱駝艦」の幟が雰囲気を盛り上げる。「天賦典式」は「この世に生まれ入ったことこそ大いなる才能とする」と麿さんが名付けた大駱駝艦の舞踏様式。

舞台が終わってロビーに登場された麿赤兒さん。麿さんは1943年生まれの81歳。白塗りで女装だが、その異様さよりも舞台でのしなやかなしぐさ、柔らかい動きに見惚れる。土方巽などど同様、若い時にダンスを学んだことが「舞踏」という世界にも生きているのだろうか。
西洋の身体感覚、美学に違和感を覚え、たどり着いた日本人の身体感覚、身体美、身体表現が舞踏。

金粉を落として少し遅れて田村一行さんもロビーへ。
昨年5月の但馬コネクションでゲストとしてお話を聞いたり、今年2月の豊岡市民プラザでの公演後に、麿さん、田村さんと一緒に写真を撮らせてもらったり。
学生時代によく観劇していた「舞踏」が、再び私の中に戻ってきました。

幽霊とか宇宙人が今もどこかで〜「仮設劇場・立夏」

『仮設劇場・立夏』

芸術文化観光専門職大学(CAT)キャンパスの裏側駐車場に仮設劇場が登場。

芸術監督の河田奏太くん(3年生)曰く「劇場は様々な人間が出会う場所」。芸術家と、俳優やダンサーと、劇世界に生きる人と、知らなかった自分と、観客同士が出会う場。

今回のシアタープログラムは2本立て。
『走りながら眠れ』(作:平田オリザ、演出・舞台美術:河田奏太)
『幽霊とか宇宙人が今もどこかにいるかもって思う。』(作・演出:櫻井拓斗)

『幽霊とか宇宙人が今もどこかでいるかもって思う。』を観劇する。
客席は実習棟大道具部屋の中。
(これがなかなかいい劇場空間になっている)。

開演前に挨拶する作・演出の櫻井拓斗くん(4年生)

彼は東京オリンピック(2021年)開会式でダンスパフォーマンスに参加したり、昨年は『セッションハウス・アワード ダンス花2024』の「未来賞」(将来有望な若手に贈られる)受賞

シェアハウス「江原101」の住人なので普段から会うことも多く時々住人みんなで食事をしたりする頼もしい学生。

3人の学生が出演。(林 充希、松村寿々乃、吉松 響)

「今回のクリエーションはムーブメントリサーチ」「ものとの関係性から生まれる動き」「ものと人を合成することで変化する”動き”の面白さと可能性を実感する」(チラシより)

タイトルを意識してパフォーマンスから何を感じるのか、そんな思いを持って観ていました。が、それはどうもそうでないような。もっと抽象的なもので目の前の”踊り””肉体表現”そのものから感じるものなのか。

学生たちのクリエイティブな感性に向き合う体験はCATが開学したからこそ得られる楽しみでもある。

豊岡演劇祭2024プログラム発表

今年も豊岡演劇祭が近づいてきました。
今回発表された「豊岡演劇祭2024」は、公式プログラムを中心に掲載。フリンジも含めて全公演、パフォーマンスが掲載されているわけではない。7月中旬には再度詳しいプログラムが発表されるとのこと。

2019年に第0回がプレのような位置付けで開始され、2020年第1回はコロナ対策により入場制限(定員の半数)で行う。2021年はコロナ禍中止になり、2022年第2回、2023年第3回、そして2024年第4回ということになる。(回数のカウントはこれで良いのかな?)

フェスティバルディレクターの平田オリザ氏は、5年後にアジアNo. 1の演劇祭に、とのビジョンで始まった豊岡演劇祭は着実に参加劇団、団体、観客数も伸びている。

今年の目玉として耳にしているのは、『リバーサイド名球会』。野外公演 in スタジアムと銘打って、スリーピルバーグズ(役者は 八嶋智人など)。コウノトリスタジアムで開催される。

私としては、読売テレビプロデュース『ムーンライト・セレナーデを聴きながら』にも注目したい。
作品の解説には、
「現代の高校生が出石出身の斎藤隆夫が生きた昭和15年にタイムスリップし、ジャズと出会う青春音楽活劇」
なんの事か全く理解できないところが興味を唆られる。(笑)

話は変わりますが、但馬コネクション9月のセッションは、この豊岡演劇祭がテーマ。
「2人のプロデューサーからみる豊岡演劇祭」と題して、最前線で活躍(苦労も)している
豊岡演劇祭若手プロデューサーのお話を聴きます。こちらもお楽しみに。

学校茶道研修会〜裏千家淡交会

茶道裏千家淡交会 近畿第一学校茶道連絡協議会の研修会に出席。
会場は西村屋ホテル招月庭(豊岡市城崎町)

近畿第一地区とは、滋賀県、奈良県、京都府、兵庫県北部(但馬)で活動する裏千家淡交会の地区。各地区の学校で生徒に茶道を指導している先生方が集まる会。

お点前は、香住高校の生徒、後見は村岡高校の男子生徒。
10代の若者がお茶を熱心に学んでいる姿を想像する。
頼もしく格好いいなあ、と感じる。

講演は大乗寺(兵庫県香美町香住)の山岨眞應服住職にお願いをしました。
題して「大乗寺と円山応挙」。

今年の2月に大徳寺聚光院のご住職様と関係の皆さまをご案内させていただいた時の山岨副住職のお話が忘れられない。
美に対する鋭い洞察と、ユーモアたっぷりの解説にすっかり魅了された経験があるので、今日の講演もとても楽しみにしていました。
やはり、大乗寺の実際の現場で襖絵を見ながらではないので、お話の内容が実感で気ないのが残念ですが、私自身は、しっかりと復習させていただきました。

大乗寺行かれたことのある人も多いでしょうが、ぜひ、山岨副住職のご案内は必聴ものです。CATの学生たちを連れて行く企画を組んでみたいと思っています。

小さなお洋服屋さん〜シェアハウス江原101

「誰もが気軽に立ち寄れて、いろんな人と出会えるイベント」を芸術文化観光専門職大学の学生たちが企画。大勢のお客様をお迎えしました。

演劇やパフォーマンスではなく、洋服に関するイベントは新たな試み。
様々な用途に使えるスタジオにしようというコンセプトで出現した空間が、見事に人と洋服の出会いの場へと変容した。なんかこの抜けた感じが良い。

地元の洋服屋さんからデッドストックの洋服を出展していただいたり、古着の洋服を持ち寄ったり、集まった洋服は様々。

小さなお子様連れの若いご夫婦や、今回はレディス中心だったので、イベントを知った若い女性や近所の方がひっきりなしに来店いただいたと聞きました。

演劇やパフォーマンスとは異なった企画なので集まってくる人々も普段と違ってリラックスムードが漂う。とてもいい感じの洋服屋さんとなりました。

「Friends(友達)」 〜 鳥の劇場×SPAC

鳥の劇場(鳥取市)での公演を観劇。

「Friends」(作=安部公房、演出=中島諒人)。鳥取の知人から「Friends」なかなか評判いいよ」との連絡を受け、出かけることに。鳥の劇場は2月の「新作公演2024」に行ったのが初めて。公演ももちろん、劇場のある鹿野町の街の佇まいもすっかりお気に入りでした。

前回は三島由紀夫の戯曲集、今回は安部公房の作品を中島諒人さんによる演出で上演。役者は鳥の劇場とSPAC(静岡県舞台芸術センター)の役者の共演。中島諒人(鳥の劇場)宮城聰(SPAC)の両演出家は、鈴木忠志(劇団SCOT、早稲田小劇場主宰者)を標榜する演劇人、と伺っている。(私の大好きな鈴木忠志派の演劇だ!!)

前回は議場劇場(元役場)での公演だったので、鳥の劇場で見るのは初めて。もともと学校だった校舎を利用しているので、小さな可愛いイスやテーブルがあったり。カフェの隣が劇場。

公演後のアフタートーク。出演した役者さん全員が並んで、観劇後の感想や質問を受け付ける。熱心な演劇ファンも多く、なかなか鋭い質問が飛ぶ。

『東京のど真ん中での無目的スペースの試み「三田の家」のことなど』熊倉敬聡 但馬コネクション#72

但馬コネクション5月セッションを開催。

ゲストは芸術文化観光専門職大学の教授である熊倉敬聡(くまくら・たかあき)氏。以前は、慶應義塾大学の教授もされていました。
テーマは「東京のど真ん中での無目的スペースの試み「三田の家」のことなど」という長いタイトル。私は、「東京のど真ん中」「無目的スペース」「三田の家」(三田商店街にある)のワードに反応。一体なんなんだろう?と興味津々。

私にはもう一つ熊倉氏に抱く関心は、ご専門が「美学」「フランス文学」「芸術論」「現代アート論」 などの著書もお書きになっているので、それにも触れてほしい。

その両方について、ご自身のこれまでの人生経験を交えながら赤裸々に語っていただく。深く、重く、ご自身の感ずるところを信じチャレンジし、キャリアをつんで来られたことに敬服。

熊倉さんが発する言葉「デザインしないデザイン」「余白を持つ」「作り込みすぎない」。これは芸術、建築、生活スタイルにも適用できる、私自身も最も共感するキーワード。

現役慶大生が熊倉氏に質問

「三田の家」の運営、集まる人たち、パーティ、コミュニケーションなど、どれも魅力的で、この会場となっているシェアハウス「江原101」にとっても大いに参考になる。まさに「三田の家」は「江原101」の先生だと思う。

熊倉氏の苦悩のパリ留学時代、実験的授業を次々と行った慶應義塾大学教授時代、どれも自由で、自分に忠実で、チャレンジングな話ばかり。参加者にみなさんも目を輝かせながら聴いているのがわかる。

鳥取と豊岡(江原)に滞在して9月に向けて演劇稽古をしている現役の東大生、慶大生など5人が参加。CAT学生も交えて、活発な意見交換。

魅力ある地域にしていくためのヒントが詰まり、現役学生にとっても大きな刺激になったセッションとなったのではないかと思う。

和泉市久保惣記念美術館

まず、和泉市から。
大阪府南部の泉州に位置する人口約18万6千人、泉州で唯一大阪湾に面していない内陸の市。大阪市都心から約25km。

和泉市久保惣美術館は、明治時代創業の綿業で大きく発展した「久保惣」(現・久保惣株式会社)が和泉市に敷地、建物、美術品、基金を寄贈し、1982年(昭和57年)に開館した美術館。さらにその後、久保家、久保惣関係者から音楽ホール、市民ギャラリー、研究棟などが追贈され、現在は約5000坪の敷地を有する。

初めての訪れたが、まず正面から見た立派な建物に驚く。明治時代にこの地で綿業を起こし、発展してきた歴史を感じる。

エントランスを入って本館へ向かう途の美しい庭園。

現在は、「近世絵画と久保惣の名品〜源氏・応挙・若冲〜」の特別展。(6/16まで)

桃山時代のやまと絵画壇をリードした土佐光吉による「源氏物語手鏡」、宮本武蔵「枯木鳴鵙図」は、共に重要文化財。

音楽ホール「久保惣市民ホール」は、新しい建物だが、市民ギャラリーはかつての倉庫だったのだろうか歴史を感じる立派な建物。

歴史を保存し活用すること。和泉市の姿勢(市政)が伝わってくる素晴らしい美術館でした。

シン・東洋陶磁〜東洋陶磁美術館

4月12 日にリニューアル・オープンした東洋陶磁美術館。(大阪市北区中之島)リニューアルしてから初めて行きました。増築部分のガラスに囲まれたエントランスが気持ち良い。

現在、リニューアルオープン記念特別展「シン・東洋陶磁 MOCOコレクション」開催中。
(2024.4.12〜9.29)

「シン」は、「新」「真」「心」を現す。

東洋陶磁美術館は、住友グループから寄贈された「安宅コレクション」、韓国陶磁の「李秉昌(イ・ビョンチャン)コレクション」、民藝運動の中心作家の「濱田庄司」作品が館蔵されている。東洋陶磁としての世界第一級のコレクション。

「MOCO」(もこ)。ちょっと変な発音が気になるが、the Museum of Oriental Ceramics Osakaの頭文字をとったもの。

東洋陶磁美術館と言えば、
国宝「油滴天目茶碗」(南宋時代・12〜13世紀、建窯)

ハンズオンコントローラーというシステムがあり、箱の中に手を入れ茶碗を動かすことで、画面に天目茶碗をあたかも持って上から下からぐるりと観ることができる。

国宝「飛青磁花生」(元時代・14世紀、竜泉窯)

これら二つの国宝や重要文化財として指定されている東洋陶磁が多数。

中国、朝鮮半島の青磁の色合いの移り変わりなど、一堂に鑑賞でき、歴史の変遷と合わせてとても興味深い。

CAT見学〜鳥取経済同友会の皆さん

鳥取経済同友会12名の皆さんが、芸術文化観光専門職大学(CAT)の見学を目的に来豊される。近年、神戸経済同友会の但馬支部との交流を深めようと相互に訪問。昨年はこちらから鳥取を訪問する

キャンパス見学前に、ミーティングルームで川目俊哉副学長から大学の説明をお聞きする。

冒頭、今年の4期生入学で、全国47都道府県出身の学生が揃った。わずか4年でカバーするのは、それだけ芸術と観光を同時に学べる公立大学として注目されている証と言えます。開学の経緯、全4学年揃った現在の大学の授業、地域課題、企業研修などの現状など、興味深いお話でした。

今年の入試では、学校推薦型、一般選抜など合わせて平均倍率は3.4倍。第一志望率は90%を超える全国でトップを争う。

「地元(豊岡市および但馬)に残ることを希望する学生はどれだけいるでしょうか」との私の質問に対しては、あくまで肌感覚だが「募集する企業などにもよるが、2割弱ぐらいではないか」とのこと。その中にはNPOなど、起業して残りたい学生もいる。

出石で昼食をとった後に、永楽館へ。
皆さん、出石そばを食べに来たことはあるが、永楽館のことはあまり知らない、との方が多かった。ご案内して良かった。秋の永楽館歌舞伎の宣伝をしっかりして、再訪を促させていただきました。