『明治維新とは何だったのか〜世界史から考える』半藤一利・出口治明

幕末というと、維新の三傑や坂本龍馬と言った人たちが注目されることが多いようですが、阿部正弘や勝海舟はもっと評価されていいですよね。新しい近代国家をつくる上では、阿部正弘やその理念を体現した勝海舟の貢献度がものすごく大きいと思います。実際に歴史を動かした人物に、もっと光を当ててもらいたい。薩長のリーダーも重要でしょうけれど、阿部や勝つに代表される幕府側の人間が何を考えていたかをきちんと見たほうが、より深く明治維新という大きな出来事を理解できるような気がします。
『明治維新とは何だったのか』 半藤一利・出口治明 (p230)

NHK『西郷どん』はいよいよ幕末「革命編」に突入。ドラマが描く人物像だけで「明治維新」を理解するには、ちょっと無理がある。ここで改めて「明治維新」とは何だったのかを復習しておくことは重要。ドラマをもっと楽しめるかも。

半藤氏と出口氏の対談の要点は、

・ ペリー来航(1853年)の目的は、太平洋航路の開拓

・ 老中・阿部正弘(1819年〜1857年)に注目。
− 日米和親条約
− 後の明治維新のグランドデザイン「開国」「富国」「強兵」を唱える。

・ 岩倉使節団(明治4〜6年)岩倉具視、大久保利通、伊藤博文、木戸孝允ら。
− 「攘夷の意思」を消すため(列強の現状視察)

・ 使節団渡航前後の西郷隆盛は、
− 廃藩置県(明治4年)、鉄道開業(明治5年)、太陽暦、徴兵令(明治6年)
− 旧幕府人材(勝海舟、榎本武揚)の登用

・ 理想主義者=西郷隆盛 〜毛沢東(農本主義、永久革命家)
現実主義者=大久保利通〜周恩来、鄧小平(実務家)

・ 日露戦争勝利 ⇨一等国の仲間入り ⇨欧米にゴマスリ止める ⇨独自路線外交 ⇨「開国を閉ざす」 ⇨攘夷が再現

・ 第2次大戦後、吉田茂首相は「強兵」を捨てる

【番外編】
日本の近代化において、「日本語」で高等教育ができたことの意義は大きい。西周、森鴎外や夏目漱石たちが「和製漢語」を考案。

西周が考案 =「芸術」「科学」「理性」「知識」「概念」

森鴎外が考案=シンフォニー→交響曲、ポエジー→詩情、ファンタジー→空想、アクトレス→女優、ノベル→長編小説、コント→短編小説

夏目漱石が考案=インポシブル→不可能、エコノミー→経済、バリュー→価値、カリキュレーション→打算、アソシエーション→連想

幕末・明治の先人達は偉いです。

『三つの石で地球がわかる』 藤岡換太郎・著

地球の構造はとは要するに、鉄の球(核)の周りを橄欖岩(かんらんがん)が取り囲み(マントル)、その周辺に玄武岩(海洋地殻)と花崗岩(大陸地殻)が薄く張り付いているだけにすぎない、ともいえるのです。
『三つの石で地球がわかる』 藤岡換太郎・著 (P32)

地球の真ん中は鉄
その周囲にあるのはマントル「橄欖岩」
地表70〜100kmは、
海底が「玄武岩」
大陸が「花崗岩」

なんとシンプルな解説だろう。

石の話になると、無数(と私には思える)の名前(しかも難しい漢字)の岩石を理解し、覚えなくては、と敷居がとてつもなく高い。

地球誕生、生物誕生、人類誕生は、現代人共通の興味。そんな人(私)にとって、この本は、地球の成り立ちを頭に入れるのにピッタリの書籍です。

記述には、「玄武洞」と命名した小藤文次郎(東大地質学)、磁場逆転説を唱えた松山基範(京大教授)、蛇紋岩(養父市)などが登場。

身近に、玄武洞、山陰海岸、神鍋火山火口、鉱山(生野銀山、明延鉱山)など地球の地質的な遺産が多い地域。

山陰海岸ジオパークに関心を呼ぶ本。
ザックリと、この本で理解することをお薦めです。

『まかせる力』 高田明、新将命・著

メンターは一人(一作品)でもよいですが、できれば複数を持ち合わせておくと広がりが出る気がします。例えば、歴史上の偉人と近現代の名経営者などの複数のファンになっておくとよい。そうしたメンターに繰り返し触れることで、共通する教え・法則のようなものに気づくこともあるでしょう。
『まかせる力』 高田明、新将命・著 (p38)

帯にある「ジャパネットはなぜ社長交代後も高成長が続くのか?」にひかれて読んでみました。

私自身、昨年5月に社長交代を行ない、1年が経ちました。「会長」として何をすべきか、何をしないでおくべきか、模索しながらの毎日です。新(あたらし)氏の「経営者の最大の美学は引き際」の言葉を信じつつ。

「企業理念には3つの意味がある」
・ Mission 〜 会社は何のために存在しているのか?
・ Vision    〜 どうなりたいのか?
・ Value  〜 何を大切にしているのか?

高田氏の情熱を傾け、原理原則を大切にする経営は大いに示唆に富んでいる。

路線バス利用してますか?〜十勝バス(株)の再生物語

十勝バス(株)野村文吾 代表取締役社長

「皆さん、路線バス利用していますか?」の質問で始まった今月の経営者倶楽部。ゲストは、十勝バス(株)の野村文吾社長。

考えてみますと、路線バスには不安が多い。
・ 系統図が分かりづらい。(自分の目的地にはどのバスに乗ればいいの?)
・ 乗り方がわからない。(前ドア?後ろドア?料金はいくら?いつ払う?)
・ 待ってても来ない。(平日・休日ダイヤ、定時に来ない、本当に来るの?)
・ 降車の合図はどうするの(通過してしまわないかドキドキ)

皆さん、どうでしょう?

北海道帯広市の十勝バス(株)。40年間毎年客数が減り、いよいよ倒産の危機。そこで立ち上がったのが野村文吾社長(4代目)。大手企業を退職、十勝バスに入社するが、社内ムードは最悪。戸惑いの中、「社員を愛する」ことから始める。ハチャメチャ(失礼!)な展開から、見事、十勝バスの再生に成功。

『黄色いバスの奇跡』(吉田理宏・著)

奇跡の物語は、こちら↑の書籍を。

サインには「心」の文字が

地方のバス会社の8割は実質的には赤字経営。(行政の補助で決算は黒字だが)
その中で、十勝バスの復活は奇跡と話題になる。

地方公共交通の再生のポイント
・ 不安の解消
・ 目的地提案(移動は手段)
・ 見える化(地図、路線、運行など)
・ ITの活用(目的別路線、情報アプリの開発)

公共交通手段が無くなる地域は廃墟となる、とも。
但馬地方の公共交通を真剣に考えないといけない。

「日本文学盛衰史」トークショー〜高橋源一郎氏を迎えて

城崎文芸館入り口。

城崎温泉(豊岡市)にある城崎文芸館
2016年にリニューアルしたのを契機に、企画展、文学に関するイベントを勢力的に開催している。

今回は、第3回企画展「文学と演劇と城崎温泉」(2018/5/19-2019/3/31)のオープニングイベントとして「高橋源一郎&平田オリザ氏トークショー」があり、参加しました。

左より幅充孝氏、高橋源一郎氏、平田オリザ氏。

夏目漱石、正岡子規、二葉亭四迷、石川啄木、北村透谷ら、明治・近代文学創始者たちの苦悩を綴った「日本文学盛衰史」に纏わるトークショーが繰り広げられる。

小説「日本文学盛衰史」の作者は、作家・高橋源一郎氏。

舞台化するのは、演出家・平田オリザ氏と劇団「青年団」。

対談モデレーターを務めるのは、会場「城崎文芸館」をプロデュースした、
ブックディレクター・幅充孝氏((有)バッハ代表)。

お話は、原作者を中心に、軽快に進む。それぞれプロ中のプロ。内容はとても深く、近現代の文学の流れを説明しつつ、小説とは何か?演劇とは?人間の表現の根源とは?など、面白い発言が次々に飛び出す。

高橋氏の「小説の欠点は終わらなければならない」という哲学的(?)な言葉がとても印象に残る。作家、クリエーターならではの、心の叫びに聴こえました。

『人生で起こることすべて良きこと』 田坂広志・著

だから、私は、様々な「逆境」を与えられた人生を歩んできて、
その人生を振り返り、今、心の底から、こう思えるのです。

人生で起こること、すべてに深い意味がある
人生で出会う人、すべてに深い縁がある

そして、この二つの言葉が、歳を重ねるにつれ、私の中で、
一つの言葉へと深まっていくのです。

人生で起こること、すべて良きこと

『人生で起こることすべて良きこと』 田坂広志(*2)・著 p232

 

台湾で交通事故(*1)にあい、帰国後、日本で頭部手術。

台湾旅行の道中に読もうと思って鞄に入れて持参していたのはこの本。
結局、読みかけの残りページは、手術を翌日に控えた病室であった。

鳥肌が立った。

今、私に起きていることと、本に書かれていることが、余りにも一致。
偶然なのか? 必然なのか? 何かに導かれたのか?

事故直後に私の頭を過ぎったのは、「これをきっかけに、何かさらに充実した生き方、人生のペースを考えてみよう、やりたいこともいっぱいあるしな」という、とても前向きな気持ちであった。自分でも不思議な感覚でした。

まさに、人生で起こることすべてに深い意味があるのだと実感した瞬間でした。

「人生、何が起きるか分からない」と誰もが思い、実感することも多い。

ぜひ、この本の一読を。


(*1)交通事故(台湾)
2016年3月11日朝7時前、私は台湾の台北の歩道をウォーキングしていました。それは自宅でも、東京でも、海外のどこにいても必ず行なう健康管理の日課でした。

その日も、宿泊しているホテルを6時に出てウォーキング。直線道路の横断歩道を青信号で渡りながら「今日も体調はいいぞ」と思った瞬間、右後ろから来た自動車に跳ねられた。身体が空中を飛び、頭から着地。頭を強打し、意識不明。

救急車で運ばれ、心臓の鼓動と血圧を測りながら、集中治療室で3日間。何が起きたのか理解するのには、さらに日数が必要でした。

(*2)著者(田坂広志 氏)
田坂氏とは、グロービス在学中に開催された「あすか会議」などで数回、講演をお聴きしたり、名刺交換もさせていただきました。毎回、田坂氏の人間心理、生き方、現代社会に対する深い考察に感銘を受けます。

『劇的なるものをめぐって』〜鈴木忠志とその世界

学生時代に読んだ『劇的なるものをめぐって』、「トロイアの女」(1977年)「バッコスの信女」(1978年)岩波ホールでの上演チケット半券。

異形と異境
演劇とは、精神の荒野からはるばると異形をしてやってくるものであり、
安易な対象化をきっぱりと拒絶するような本質を伴っている。
それは語られるものではなく、生きられる世界のことだ。

実生活では解決できず、しかも常に人間に迫られている問題がある。
その永遠に解決しない問題の渦中を生きるもの ー それが芝居である。

『劇的なるものをめぐって』(早稲田小劇場+工作舎 編、1977年発行)p6

上記は『劇的なるものをめぐって』の冒頭文。
ページを開くと、一気に学生時代にワープ。
「懐かしい!」と言っては、鈴木忠志さんに叱られそう。

学生時代には、演劇論、肉体表現、精神分析、文明論、哲学などいろんな本を読んでは、友人と議論をしたものだ。
(「経済学はないの?」というツッコミはなしですよ)

『劇的なるものをめぐって』最初のページ。初心生涯(今回の鈴木さんにいただいたサイン)

学生時代に観た、鈴木忠志・演出「早稲田小劇場」の芝居ですっかり演劇の虜になった。

寺山修司の「天井桟敷」、唐十郎の「状況劇場(赤テント)」、佐藤信の「劇団黒テント」、「つかこうへい事務所」野田秀樹の「夢の遊眠社」など。
笠井叡、土方巽(没後の映画)、田中泯など。芝居も舞踏もよく観た。

これぞ、私にとっての「劇(激)的なるものをめぐって」(自宅にて)

2014年5月に早稲田大学大隈講堂にて、鈴木忠志氏の講演会を聴いた。
「早稲田小劇場どらま館」オープンを控えた記念講演。
テーマは、「演劇の社会的使命」だった。

印象に残ったこと(私のメモより)
・ 日本のアイデンティは何か?日本の西洋化が正しかったのか?
他人との差異、異質なるものと出会う中で考える。演劇はその手段である。

・ 2600年前に演劇が始まる。集団・言葉・身体は、歴史性を持ったもの。
私はどこから来て、どうなって、どこへ行くのか?⇨演劇という形式を通して考える

・ 自信がないとダメ。自信とは、人の前に立つこと、国、民族を背負うこと。

・ 戦後の経済成長により、我々の身体が変わる→精神が変わる→
生活スタイルが変わる

・ 現在の危機 → コミュニケーションシステムが変わった
→言語が変化している(脱・身体化)

・ サン=テグジュペリの言葉
「子どもは生まれたところが故郷、大人は死んだところが故郷だ」
鈴木忠志曰く「芸術家は、心の中に故郷がある」

お帰りになる前に、自宅にちょっとだけ寄っていただきツーショット。
これぞ、私にとっての「劇(激)的なるものをめぐって」。

厚かましくも、テーブルにもサイン。
全部で3つもサインをいただいてしまいました。
ありがとうございました。>鈴木さん

今度は利賀村に参ります!