『松泉館』〜大正〜令和に継なぎ育む美意識

松泉館玄関 (若林純仁理事長)

『松泉館』(神戸市灘区宮山町3丁目)を訪ねる。
7年に渡って修復工事を請け負っている左官の久住章さんから、丹波佐官組合の見学会に便乗する形でお誘いいただいた。

『松泉館』は、造り酒屋「忠勇」創業の若林家が1921年(大正10年)に建てた建物。
現在、敷地内にある「学校法人松泉館 六甲幼稚園」を経営。理事長であり、オーナーの若林純仁氏から建物の説明をしていただく。

華やかさもありながら、落ち着いた趣がある漆喰壁

久住さんの解説が始まる。
玄関前の永源寺石の石畳。滋賀県東近江市を流れる永源寺川の石。京都に運ばれて庭石として使用される。すでに手に入らない貴重な石。

永源寺石は、鉛の鉱石(方鉛鉱)の輝きのある銀白色と緑色が特色。マンガンを含むバラ輝石はピンク色が入り混じる。

『清酒 忠勇』
残っている当時の広告看板が飾ってある。

工事を請け負ったのが長尾 健氏(株式会社いるか設計集団代表)、家具を納めたのは永田 泰資氏(永田良介商店6代目)。縦長のアンティークな窓は、まるでブルーの椅子の背もたれのよう。

画像クリックして見てください。

これだけの表情を見せる土。
それを表現していく匠の技。
まさに久住章さんの真骨頂。ただ圧倒される。

勝手口の床のタイルは建築当時の大正時代のもの。洗面台に使用されているタイルはガラスタイル。

松泉館の裏手にある蔵。こちらの修復も久住さんが手がける。

随所に優れた左官技術が施されている。
見学を終えて久住さんは「50年後にこれらの左官技術を継承していけるか心配だ」とも。
この「土と左官」必ずや継承していかなければならないと強く思う。
久住さんが私に語ってくれた言葉「大切なのは美意識やで」。
我が家の「久住語録」に加えておかなければ。