『絶対悲観主義』 楠木建・著

繰り返しますが、幸福ほど主観的なものはありません。幸福は、外在的な環境や状況以上に、その人の頭と心が左右するものです。あっさり言えば、ほとんどのことが「気のせい」だということです。自らの頭と心で自分の価値基準を内省し、それを自分の言葉で獲得できたら、その時点で自動的に幸福です。「これが幸福だ」と自分で言語化できている状態、これこそが幸福に他なりません。

第2章 幸福の条件 (p48)

『絶対悲観主義』 楠木建・著

副題の「心配するな、きっとうまくいかないから」は、絶妙の表現ですね。楠木さんお得意の(?)逆説的な考えを上手く表現されている。「きっとうまくいくから」と言うと「上手くいかなきゃならない」と使命感が生じる。「みんな成功したい(上手くやりたい)と思っているのに、大抵は上手くいかないのだから気にするな」と言うところでしょうか。そう思うと緊張を和らげ、失敗してもまたチャレンジしよう、とポジティブな気持ちになれそうだ。絶妙の表現ですね。

東京で何度か講演をお聴きしたり、実際にお会いしてお話をしたことがあります。ユーモアたっぷりのお話は、モノゴトには表裏(本音と建前)があって、逆からみると全く異なった世界(考え)も見えてくることを教えられます。

・高齢化問題(健康、認知症など)に対して「教養」の重要性。
・友達とは、偶然性、反利害性、超経済性という条件を備えた人間関係
・藤沢武夫(本田技研工業(株)創業副社長)の「経営はアート、演出の基本は意外性」

「第12章 痺れる名言」には、歴史上の人物、歴史家、作家、政治家、俳優などの語り継がれる「本質をつく名言」が紹介されています。どれも、楠木さん流の解釈と共に紹介されているのが面白いし、よりグッときます。

心配せずに、「私の幸福言語化プロジェクト」を始めてみます。

『基礎自治体の文化政策』〜まちにアートが必要なわけ 藤野一夫・著

藤野一夫+文化・芸術を活かしたまちづくり研究会

全国各地で繰り広げられている「文化・芸術を活かしたまちづくり」を現地調査・研究しまとめた書籍。調査を行ったのは基礎自治体の職員たち。指導助言者として参加した藤野一夫(芸術文化観光専門職大学副学長/神戸大学大学院教授)氏がまとめたもの。

新潟県十日町の「大地の芸術祭越後妻有アートトリエンナーレ」、「金沢市民芸術村」「いわき芸術文化交流館アリオス」など、全国に先駆けて新しい制度を導入したケース、外部から実績のあるプロデューサーを招き開催するもの、市民ワークショップを繰り返して建設した施設、地域に根ざした生活、街並み、芸能、空き家などを再活性化する試み、など参考になる情報が満載です。兵庫県では、「兵庫県立芸術文化センター」「三田市総合文化センター 郷の音ホール」が紹介されています。

私は、但馬の文化活動、特に各市町で行われている音楽イベントについて関心がありました。相互の連携、情報の共有などが希薄なのに少し課題を感じているので、芸術文化観光専門職大学(CAT = College of Art and Tourism)の藤野副学長にお話をお聞きする機会を作っていただく。藤野副学長は、自治体の文化政策が専門で、ドイツにも長く滞在され、ご自身は音楽にとても造詣が深くていらっしゃるので、大きな学びを得ました。この著書も、直接いただく。

第3章には、平田オリザさんの公開シンポジウムの基調講演「文化によるまちづくりの可能性」も掲載されています。現代社会の現状、問題点を浮き彫りに、それを文化でどう解決していくのか、平田オリザさんのお話は説得力があり、いつも納得、ワクワクする。ご一読を。

『古くて素敵なクラシック・レコードたち』 村上春樹・著

レコードを集めるのが趣味で、かれこれ六十年近くせっせとレコード屋に通い続けている。これは趣味というよりは、もう「宿痾」に近いかもしれない。僕はいちおう物書きだが、本にはなぜかそれほどの執着はない。しかしレコードに関しては、認めるのはどうも気恥ずかしいのだが、それなりの執着があるみたいだ。

『古くて素敵なクラシック・レコードたち」
なぜアナログ・レコードなのか? (p10)

村上春樹と言えばジャズ、と思い浮かぶ(若い時にジャズ喫茶もしていた)が、クラシック音楽の造詣も深い。まあ、私がどうのこうの解説するのもおかしい。彼の小説を読み、ジャズの蘊蓄を学び、いろんな知的興味を引き出してくれたのだから。

「中古レコード店に行くとまずジャズのコーナー、それからクラシックコーナーへ。」
「レコード・コレクションは、ジャズ7割、クラシック2割、ロック・ポピュラーが1割」
「ジャケ買い、安いから、クラシックではコンプリート蒐集しようの目論見はない」
「名盤には興味し、ダメ元でできるだけ安く買って気に入らなければ処分、気に入れば残す」

などなど、村上の行動パターンを知ると、私の学生時代を思い出す。新宿の中古レコード屋『UNION』に暇さえあれば通って、レコードをチェックしたものです。私の場合は主にジャズだったが、アルバイト代がほとんど全てがレコードに消えていた。私の場合は、ジャズ8割、ロック1.5割、クラシック0.5割かな。

と、言うことでこの「古くて素敵なクラシック・レコードたち」には、ほとんど知られていない(私が知らないだけかもしれないが)演奏家、指揮者も多数登場する。

これらを聴くのは、以前だとほとんど不可能(レアなものばかりなので)だったが、今は、アップルミュージックで検索して結構見つかる。村上のクラシック・ワールドを読みながら、ダウンロードして聴く。「古」(いにしえ)と「今」が混じり合う、なんだかすごい時代になっていますね。

全部で100曲紹介されています。1曲3〜4ページの村上解説を読みながら、一つの曲を異なる演奏家の演奏を聴き比べるのも楽しい。お試しあれ。

『プロジェクト マネジメント』山口周・著

『プロジェクト マネジメント』 山口周・著

「何の役に立つのかよくわらないけど、何かある気がする」というグレーゾーンの直感を大事にする心性です。これは人類学者のレヴィ・ストロースが言うところの「ブリコラージュ」です。
第四章「何の役に立つのか、よくわからないもの」 p.214

多くの企業から「イノベーションを起こすにはどうしたらよいのか?」と言う問いに答えて、筆者がレヴィ・ストロースの「ブリコラージュ」と言う概念を用いて応えている。

「ブリコラージュ」と言う言葉が気になったので調べてみると、
「拾い集めたもの」「手近なものを何でも利用して作業すること」とある。

すぐに役に立つと思えない「よくわからないもの」「ありあわせのもの」でも収集しておいて、いざという時に役立てたり、新しいものを生み出す原動力になるもの、と言う意味。

これを筆者は「野生的でしなやかな知性=ブリコラージュ」としてイノベーションの最も重要なものとして紹介している。

『知らないと恥をかく世界の大問題11』池上彰・著

やがてコロナ禍が収束したら、世界中でサプライチェーンの再検討が進むでしょう。と共に、「行き過ぎた資本主義」の見直しも行われるはずです。「行き過ぎた資本主義」とは、効率一点張りの企業活動です。
『知らないと恥をかく世界の大問題11』 池上彰・著

一言で言うと「行き過ぎた資本主義」の次に来る時代はどうなるのか。コロナ感染と言うパンデミックに後押しされ大変化が起きている現在の問題点をわかりやすく説明されている。

二極化する世界(超大国のアメリカと中国の対立、富裕と貧困の格差拡大と定着)。
トランプ再戦はあるか?イギリスのEU離脱。中東と東アジアの危機。そして最後に日本の長期政権による弊害について語られている。

特に「欧州の分断」、「中東の混乱」についてその本質を知ることことの大切さを感じる。

野草図鑑〜色で見分けられるから重宝!

『色で見分け五感で楽しむ野草図鑑』高橋修・著

「ただの雑草」が「野草」に変わり、観察してみるとどの植物も繊細な細工が施されているのがわかる。「わかる」ともっと知りたくなり、知れば知るほど好きになる。
(本書の紹介文より)

植物を調べようにも、名前が分からないと事典も図鑑も引けない。膨大な写真から似たような植物を探そうにもなかなか上手くいかない。

その点、この図鑑は色で纏められているので、グッと絞られた写真から選ぶことができて便利だ。身の回りにある「雑草」という名の植物はない。

植物に関心のある初心者には打ってつけ。
オススメです。

『知の旅は終わらない』 立花隆・著

僕は、毎日毎日移動しつづけることや、屋根がないところで一晩過ごすこと、今日寝るところと明日寝るところが違う場所であることには、なんの驚きも感じないし、むしろそのほうが心理的にはしっくりくる。どこか一定の場所にしっかり腰を落ちつけた状態というのは、あまりなじめない。
『知の旅は終わらない』 立花隆・著

「僕が3万冊を読み100冊を描いて考えてきたこと」とある。このサブタイトルの通り、出生から戦前戦後の体験、青春時代、そして「田中角栄研究」「ロッキード事件」と、その好奇心(関心事)は、一つのところに留まらず、次から次へと転戦していく。「引用」は、私が読んで最も印象に残った箇所を引っ張り出すのだが、ことこの著書については、次から次へと「移動」してしまうのでテッペンが見つからない。「はじめに」の冒頭を紹介するしかない。でも、まさにこの通りなのだ。

私なりにまとめてみて、主なテーマはこんなところだろう。
「戦前戦後の引き揚げ体験」「優秀(IQで一番)な幼少時代」「東大入学と安保闘争」「青春時代の世界大旅行」「田中角栄研究とロッキード裁判批判」「宇宙、脳死、生命科学」「天皇と東大」「がん罹患と武満徹、そして死」

多岐にわたるテーマ。その中で「天皇と東大」の中の一節に東大初代学長・加藤弘之の変節」というところがある。明治時代、豊岡市出石町出身の加藤弘之は、地元の偉人として有名だが、その人物、その思想はあまり知らなかった。明治天皇に洋学の立場で西洋文明を講釈した啓蒙思想家の雄とある。もう少し、知ってみる必要がある。

私も大好きな「武満徹」とのやりとり(p383〜395)も面白い。

『地図帳の深読み』 今尾圭介・著

昨今「多様性」が叫ばれるのは、世界を均一化の方向へ誘うグローバル化への警戒感ゆえだろうか。紛争の多くはお互いの無理解に起因するのだろうが、異文化を認め合うことが広義の安全保障につながるとすれば、炎上するセンセーショナルな報道ではなく、地道に地図帳に親しむことこそが平和への王道かもしれない。
『地図帳の深読み』 今尾圭介・著 (「あとがき」p173 )

著者の「あとがき」を読んで、そんなに高尚な学びにもなるんだと気づく。この著書の面白いのは、地球誕生からの地形をベースに、ヒトの歴史を辿っていること。国名、地名などのネーミングの由縁など、地形(空間)と歴史(時間軸)とを交差させながら解説しているところなど。

コロナで中断してしまったが、これからいっぱい「旅」をしてみたい、と読んでみた。

身近なところでは、「日本最多 七つの国にまたがる兵庫県」(p52)訪ねたことのある「中国雲南省の大河並走〜長江、メコン川など名だたる川の源流部」(p24)など、深く知るとさらに興味が湧いてくる。

『音楽と契約した男』 瀬尾一三・著

『さらに祖父の家からバスで20分ほどの距離に、母方の祖父が持っている劇場があった。その劇場は、1週間のうち何日かは映画を上映し、月に約10日間は旅役者の一座が公演を開催していた。(中略)
映画のスクリーンがある場所は芝居が上演できる舞台になっており、その裏には楽屋がある本格的な劇場だった。瀬尾少年が劇場に行くと映画を無料で観ることができたから、気に入った映画は何回も観た。

『音楽と契約した男』 瀬尾一三・著(p18)

いつだったか、誰からだったか、忘れてしまったけど、音楽プロデューサーの「瀬尾って人」(この名前は覚えていた)が、「出石に来たよ」(だったか「出石と縁がある」)と聞いたことがずっと頭に残っていた。この本を見つけた時、ピンときて即購入。
引用した文章を読む限り、これは豊岡市出石町の永楽館に間違いなさそうだ。聞いた話は正しかった。(ほっ!)

読んだきっかけはそうだが、そもそも音楽大好きな私も学生時代からジャズもロックもJポップも親しんできたので、瀬尾さんがプロデューサーとして、アレンジャーとして関わった曲を知って驚愕!

中島みゆき、長渕剛、かぐや姫、吉田拓郎、風、徳永英明、などなどなど。当然ながら松任谷正隆やユーミン、亀田誠治などミュージシャンとの交友も深い。

なんだ、私が聴いてきた曲の裏側(?)にはみんな瀬尾さんがいたんだ。

出石のご縁で何か関わりができたらいいなあ。豊岡市は今年から世界を視野に演劇祭もやる予定。音楽と演劇(パフォーマンス)との融合で面白いことできそう。

地図でスッと頭に入る歴史

かねてより「世界史」と「日本史」を復讐してみようと何冊かの本を読み、自らのオリジナル年表(エクセルで作成)に整理する作業を行ってきた。

単に年表を覚えるのではなく、その事件がなぜ起きたのか?を意識してやってきた。

ちょっと一服な感じでこの2冊を手にとる。確かにシンプルで頭の中が整理できる。