『山月記』(豊岡演劇祭2022)

久しぶりに養父神社(養父市)にやってきた。境内に向かう階段から眺める景色。手前にJR山陰本線が通り、平行して流れるのが円山川。

境内で開演を待つ観客。
小説家中島敦の『山月記』をひとり芝居で演じる公演。そのストーリーがこの神社の佇まいの中でどのように演じられるのだろうか。

夕方6時。段々と空が黒ずんでいく。どこから虎が出てくるのだろうと想像を駆り立てられる。

ひとり芝居『山月記』。演じたのは小菅紘史(右側)。音楽チェロ演奏は中川裕貴。

照明の中に浮かび上がったり、暗闇に消えたり、境内独特の空気感を取り込んだ迫真の演技に観客皆が引き込まれる。

『スーパーハッピーYBランド2022』(豊岡演劇祭2022)

やぶ市民交流広場(YBファブ)での『スーパーハッピーYBランド2022〜チルチル&ミチルのハッピーツアーズ』公演に行く。

昨年オープンした「やぶ市民交流広場」は初めて。良いホールだと周囲の友人から聞いていたので、ぜひ行ってみたいと思っていました。YBホールの「初めて」が、音楽コンサートではなく、演劇やダンスになりました。

多田淳之介 構成・演出の観客参加型の演目。YBホールの天井裏から楽屋、搬出搬入口、スタッフルームなど、全館を回っていく劇場ツアーになっていて、普段入れないバックヤードを見学できる仕掛けになっている。出来立てのホールを使う心憎い演出ですね。

いろんなホール施設を回りながら、それぞれの場所で「幸せの青い鳥」探しをする。小さい子供たちが目を光らせながら、ホールを巡る。

『Madama Butterfly』(豊岡演劇祭2022より)

『Madama Butterfly』
ノイマルクト劇場+市原佐都子/Q

衝撃的な演劇だ。「マダム・バラフライ」といえば、誰もプッチーニの『蝶々夫人』だと知っているが、この演劇は、日本(女性)から見た西洋(男性)の相違(違和感)、コンプレックス、を大胆な性表現で描く。衝撃的なのは、この内容(筋書き)だけでなく、役者が映像と渡り合うシーンが延々とつづく。その異次元とも言える演出にさらに興味が惹きつけられる。女優の竹内香子(きょうこ)の演技も素晴らしい。感動!

上演後のアフタートーク。作・演出の市原佐都さん(中央)はKIACの芸術監督。質問を投げかける豊岡演劇祭アドバイザーの相馬千秋さん(右側)。相馬さんご自身もフランスで学び活動された経験をお持ちである。

海外(スイス、チューリヒのノイマルクト劇場)で制作することで発見すること、例えば、西洋と日本の感性の違い、人種の壁など、苦労話も交えながらトークは進む。

『落ちて水になる』 松本成弘・越後正志/作・制作

「豊岡演劇祭2022」フリンジ
『落ちて水になる』 松本成弘・越後正志 / 作・制作

友田酒造さん(豊岡市日高町江原)の酒蔵空間を活かしながら制作した作品。酒造りの歴史が刻まれた道具、家族の暮らしと共にあった家具が、天井が吊るされ、水が滴り落ちる。
古くて静寂の土蔵空間に、ゆっくりと時間が流れていく。

打合せ時の画像(作品はトタン扉の中にある)

トーク『江原の昔話を語ってもらう』は、大屋根が架かる酒蔵の前で開催。写真がないのが残念ですが江原や旧・日高町内在住の方、CAT在学生、まちづくりや建築に興味のある学生たち、(東京や福岡からも)、記録映像を撮るスタッフ、マスコミの方など、20〜30名ほどの様々な人が集まりました。

戦後の江原地区の変遷を語る。本通り商店街の日高町役場(現・江原河畔劇場)〜日高郵便局の間には約70店舗の商店があったこと、友田酒造の裏側の小径は、かつての山陰街道であったこと、昭和20〜30年代には、日高グンゼ工場(日高町久斗)には1250名の女性従業員が、神戸製鋼日高工場には約500名の男子工員が従事していたこと、昭和40年代には、山陰本線江原駅には、阪神間から神鍋スキー場に来るスキーヤーでごった返したこと(週末には1日1万人以上が乗降した)、などなど。

わずか(?)50〜60年前の時代の風景も生活も、今とは全く違っていることにみんな驚く。私の住む「江原」、追って少しずつ関連記事をアップしていきます。

「豊岡演劇祭2022」前半の観劇記録

芸術文化観光専門職大学

9月15日始まった「豊岡演劇祭2022」もあっという間に半分が済んでしまった。1日に1〜2公演を観ながら毎日を楽しんでいる。(学生時代から演劇には大変興味がある私にとって、この豊岡でこんなに演劇が楽しめるなんて、未だに信じられない)

一つひとつの公演の感想を書くのは至難のワザ。
『岩下徹×梅津和時即興セッション』『お父さんのバックドロップ』は既アップ。
それ以外の公演を記す。

『降りくるもののなかで ー とばり』 山海塾 (豊岡市民会館)

『新・豊岡かよっ!』 Platz市民演劇プロジェクト(豊岡市民プラザ)

『思い出せない夢のいくつか』 カミーユ・パンザ/エルザッツ(城崎国際アートセンター)

『ぼんやりブルース 2022』 ヌトミック (CAT静思堂シアター)

『よるよむきのさき』 お食事×文学×リーディング (西村屋ホテル招月庭)

演劇祭ナイトマーケット(江原)

演劇祭のもう一つの楽しみは夜の屋台。最初の週末は江原駅前広場で開催される。本来(コロナ以前)なら、この一帯にテーブルとイスを並べて、観劇後、今観た芝居の感想を語り合ったり、演劇ファン同士が熱く語りあう広場となる。残念ながら、コロナ対策として、テーブル・イスは設置できず、屋台のフードはテイクアウト。

飲み食いだけではない。広場の脇では、次から次へと大道芸が披露される。子どもたちは最前列に座り込み、拍手しながら楽しんでいる。こんな光景は、この演劇祭がなかったらあり得ない。小さい時から、芝居を観たり、大道芸を楽しんだり、きっとこの子たちの故郷の記憶として残るだろう。

回を重ねるごとに、もっと多くの芸人がやって来る、海外からもやってくる、そんなことを思い浮かべてしまう。

演劇祭はまだ始まったばかりだ。

岩下徹×梅津和時 即興セッション『みみをすます』

ここは「氣多神社」(豊岡市日高町上ノ郷)。
平安時代ごろから各地の国府近くに総社が置かれ、この氣多神社は但馬の総社とされる。大木に囲まれた厳かな雰囲気に包まれる神社だ。

神社境内をぐるりと囲むように客が立ち、座る。

その真ん中で岩下徹の舞踏が始まる。

フリージャズマン梅津和時のサックスとの即興コラボ。

カラスが鳴き、犬が吠える。
風が吹き抜けて落ち葉が舞う。
鳥居の向こうから車の通り過ぎる音。

まさに「みみをすます」。
永楽館でのパフォーマンスも観たが、その体験は全く違う。

岩下徹×梅津和時 即興セッション『みみをすます(谷川俊太郎同名詩より)』

『お父さんのバックドロップ」坂口修一リーディング公演

豊岡演劇祭フリンジ公演チラシより

豊岡演劇祭2日目。会場は「出石明治館」
『お父さんのバックドロップ』坂口修一リーディング公演

「中島らもの名作短編小説をリーディング公演として」とパンフレットにあるが、リーディングどころではない迫力満点の熱演。どこからどこまでが台本で、どこがアドリブで、客席とのやりとりもハプニング(計算できない)だらけ。ダイナミックな一人芝居。

公演後、坂口さんと立ち話。
坂口さんは『豊岡かよっ!』(豊岡市民プラザ)にも出演予定。2005年現在の豊岡市への1市5町の合併の経緯をコメディタッチで描く。「日高」役で出演。「私は日高町です。楽しみにしています」と激励させていただく。が、逆にプレッシャーになったかも。(^ ^)

鈴木忠志トーク〜利賀村3日目

恒例の『鈴木忠志トーク』。
毎回、いきなり「何か質問は?」と切り出す鈴木忠志さん。
何を知りたいのか、何に関心があるのか、なんでも答えるよ、と始まる。

初めて利賀村に来る人、過去、現在に実際に演劇をやっているか、強い関心を持っている人など、様々な視点から質問が飛び交う。特に、初めての人から「なぜ利賀村へ来たのか」「シンデレラ」のエンタメ性を観劇して、「演劇理論が変わったのか」など、ストレートな質問に対して鈴木さんの受け答えが面白い。

「今さら訊くなよね」と言いながら、その答えは毎度、本質をついたもの。
役者の日々の肉体的鍛錬・演技指導だけでなく、これも「鈴木メソッド」か。

今日の観劇は、
『鈴木忠志トーク』 利賀大山房にて
『エレクトラ』 演出:鈴木忠志、作曲・演奏:高田みどり

2つの演目を見終えて、14時に利賀村を出発し帰路につく。
休憩入れて約6時間の車の旅。
回を重ねるごとに、近くに感じてくる。
来年また来よう。