『建築映画館2023』〜建築と映像が問いかける

「建築の映像というテーマと、その表現の可能性をより多くの人と共有し、理解を深めることを目的として、本映画祭を企画した」と当『建築映画館2023』の実行委員の瀬尾憲司さん(建築家/建築映画作家/ガラージュ)が述べている。

私も建築にはとても興味を持っている。それは現地を訪ねて現物を見るのが一番だが、書籍や雑誌の建築写真を見ることで、その作品を知ることが多い。今回は映画(映像)ということで写真とは違うどんな体験ができるのか楽しみにやってきた。

会場は、アンスティチュ・フランセ東京(旧東京日仏学院)。飯田橋駅から徒歩数分。設計は近代建築の巨匠、ル・コルビュジエに師事した建築家 坂倉準三。1951年竣工。

今回は前後の時間に余裕がなくゆっくりと建物を見学できないのが残念。

初日は、長編映画「11×14」(ジェームス・ベニング監督)と、マイケル・スノウの作品集(3本の短編セレクション)で開幕。

その後、オープニング・イベントとして「現代建築映像にまつわる対話」が行われる。
建築家と映像作家の3グループが登場し、それぞれの建築作品(制作プロセス)の映像を見た後に相互に感想を述べながら議論が進む。

右側3人が建築家集団のガラージュ(小田切駿、瀬尾憲司、渡辺瑞帆)。ガラージュが今回紹介した映像はシェアハウス「江原_101」の改築直前の空き家から始まり、改築途中、そして完成するプロセスを映像にしている。(この映像の中に私も登場する)

2日目は、「近現代建築と運動」(4本の短編セレクション)上映後、トークが行われた。登壇者は、建築家 西沢 立衛氏((有)SANAA、(有)西沢立衛建築設計事務所代表)とガラージュの小田切氏、瀬尾氏。

上映されたマン・レイやル・コルビュジェ、さらにOMA(Office for Metropolitan Architecture) の作品。

ル・コルビュジェの有名なサヴォワ邸ぐらいまでは知っているが、あとは知らない建築家、建築作品ばかり。ちんぷんかんぷんなのだが、西沢氏が実際に会ってアドバイスを受けた建築家レム・コールハース(オランダ出身の建築家)とのやり取り、現場のお話はとても面白い。

とてつもなく見える建築作品を見ると、どんな建築家が、どんな発想で、何を構想して建てたのか、と目が眩み、気の遠くなる感覚を覚える。しかし、そこは建築家も人間、その人の性格や経歴を聞くとぐっと親しみが湧いてくる気がした。

今回耳にした、建築家、建築作品、映像アーティストなど、たくさんの「宿題」をもらった気分(これは大変なことになったぞ)(^ ^;;
楽しみにながら調べてみよう。

冬の快適はここから〜薪ストーブ DOVRE 700SL

燃え盛る焔(炎)!

幾何学模様の装飾がある扉の薪ストーブをよく見かける。
でも、せっかくの焔を邪魔物なしにストレートに見たいので、透明ガラスの扉にこだわった。

炎を眺めていると時間の経つのも忘れる。
ぼーっとして眺めているとストレスも忘れてしまう。
飽きないのである。

我が家の薪ストーブは、ベルギーのドブレ社 DOVRE 700SL
「ドブレ社のトラディショナルシリーズの金字塔」との解説があるが、
まさに実感するところ。

構造は至ってシンプル。
下の丸いハンドルを開閉して、ストーブ下部から一次燃焼空気が入る。
ストーブ背面上部から内部に二次燃焼空気が入る。
上部右側のレバーを左右に動かし、エアーカーテン給気調整をする。このエアカーテンは扉上部から入った空気はガラス扉を下向きに伝いながら移動するので、ガラスの曇りを防ぐ。さらに酸素の吸入を調整するので、内部の燃焼度をコントロールする。

これら全て、燃やす木材の種類、大きさ、投入する量によって、経験しながらジャストな燃焼を得る。アナログ操作の極め付きと言っていいだろう。

月1回の食事会〜今月は我が家へ

CAT(芸術文化観光専門職大学)学生たちの提案で、月1回は情報交換を兼ねて、食事をすることになっている。先月はシェアハウスでご馳走になったので今月は我が家で。

現在進行形の改築工事の設計・監修をお願いしている建築家たち、CAT学生たちの仲間で、現在、東京で大手企業に勤めるI君が来ているので、みんな一緒の食事会。

話題は大学の授業、建築、但馬地域の情報、それぞれのこれからの予定など。後半はそれぞれの話題であっという間に時間が過ぎていく。

最後は、シェアハウスのテーマソング(と、勝手に決めている)藤井風の『旅路』を肩を組んで合唱して終わる。楽しい夜となりました。

久住章さん監修により左官工事が続く

昨年10月に始めたドーモ・キニャーナ3階の改築工事が、いよいよ大詰めを迎えている。何の工事かは完成してからとして、左官の久住章さんの監修による左官工事が佳境を迎えている。

地元の若手左官屋Nさんが久住さんの指導・アドバイスを受けながら、丁寧に左官塗りが進む。

現在は下地塗りを繰り返しているのだが、来月に向けて仕上げに混ぜる予定材料を久住さんにチェックしてもらう。

30年前にドーモ・キニャーナの土壁や土でできた囲炉裏を久住さんにやっていただきました。30年経ってまた久住さんに監修をお願いできるのは本当に幸せなこと。但馬地元の若手左官職人さんに久住さんの左官スピリットと技が伝播することを願ってやまない。

カラーハンティング(Color Hunting)〜ドーモ・キニャーナ

ドーモ・キニャーナの改装設計を依頼しているガラージュから「カラーハンティングしていいですか?」って聞かれて「いいですよ、どうぞ!」って即答。そして数日後に見せてもらったのがこれ。

ドーモ・キニャーナの土と木の色調を一覧表としてフィードバック。
各フロアの写真とその土壁、木の壁、床、家具建具を「色」の視点でまとめたもの。

濃い茶色の板壁、ナチュラルな色の土壁、強烈なブルーなど、さまざまな色が混じり合っているが、全体として色のトーンに統一感があって、落ち着いた色調になっている。

ドーモ・キニャーナを構成する素材は、基礎となる駆体(鉄筋コンクリート)を除けば、「土」と「木」と「ガラス」の3種類のみ。自然素材(ガラスを石と見なす)だけでできていることによる快適性と美しさは抜群です。

夜の雪

夜の雪。
庭のヤマボウシ、トネリコ、サイフリボク。
葉を落とした木々に積もる雪。

雪が積もったカエデ。
小枝が美しい。

神は細部に宿る〜『松泉館』の左官とステンドグラス

暖炉上部の棚部分

まさに『神は細部に宿る』(God is in a details.)。

昨日見学の「松泉館」の感想。
左官の久住章さんの真骨頂。ご本人からその技法、土の種類、その他材料、直接説明を聞きながら見学する。しかし、目の前の現物に圧倒されつつメモすることもできず、記述できないのは残念。(申し訳ございません)

蔵に通じる廊下の壁

かろうじてメモしたのが「切り返し仕上げ」。
中塗りと仕上げ塗りの中間の工法。この頃合い加減がセンスの問題。
まさに細部である。

ステンドグラス

こちらはステンドグラス。
鮮やかな色のガラスの向こうが透けて見える。
ステンドグラスを透かして外を見るのは始めてだ。

画像をクリックして見てください。

今回の修復(改築)で新たに設えたステンドグラス。
厚さ20cm近くある土壁の部屋の開いた直径20cm足らずの小さな窓。
この部屋は子供たちの図書館であったり、ミニコンサートができる落ち着いた空間。

一つひとつの細部が全体を造り上げる。
「松泉館」に現在から未来へ向けて新たな価値が宿されていく。

『松泉館』〜大正〜令和に継なぎ育む美意識

松泉館玄関 (若林純仁理事長)

『松泉館』(神戸市灘区宮山町3丁目)を訪ねる。
7年に渡って修復工事を請け負っている左官の久住章さんから、丹波佐官組合の見学会に便乗する形でお誘いいただいた。

『松泉館』は、造り酒屋「忠勇」創業の若林家が1921年(大正10年)に建てた建物。
現在、敷地内にある「学校法人松泉館 六甲幼稚園」を経営。理事長であり、オーナーの若林純仁氏から建物の説明をしていただく。

華やかさもありながら、落ち着いた趣がある漆喰壁

久住さんの解説が始まる。
玄関前の永源寺石の石畳。滋賀県東近江市を流れる永源寺川の石。京都に運ばれて庭石として使用される。すでに手に入らない貴重な石。

永源寺石は、鉛の鉱石(方鉛鉱)の輝きのある銀白色と緑色が特色。マンガンを含むバラ輝石はピンク色が入り混じる。

『清酒 忠勇』
残っている当時の広告看板が飾ってある。

工事を請け負ったのが長尾 健氏(株式会社いるか設計集団代表)、家具を納めたのは永田 泰資氏(永田良介商店6代目)。縦長のアンティークな窓は、まるでブルーの椅子の背もたれのよう。

画像クリックして見てください。

これだけの表情を見せる土。
それを表現していく匠の技。
まさに久住章さんの真骨頂。ただ圧倒される。

勝手口の床のタイルは建築当時の大正時代のもの。洗面台に使用されているタイルはガラスタイル。

松泉館の裏手にある蔵。こちらの修復も久住さんが手がける。

随所に優れた左官技術が施されている。
見学を終えて久住さんは「50年後にこれらの左官技術を継承していけるか心配だ」とも。
この「土と左官」必ずや継承していかなければならないと強く思う。
久住さんが私に語ってくれた言葉「大切なのは美意識やで」。
我が家の「久住語録」に加えておかなければ。

遅がけの新年会

若手のアーキテクト・コレクティブ(建築家集団)Garage(ガラージュ)とその仲間たちとで遅がけの新年会。

彼らとは、一昨年よりお付き合いが始まる。ドーモ・キニャーナ(自宅)を案内したり、これまでの建築に関するお互い(施主として、建築家として)の経験やキャリアのお話をしたり聞いたり。

2022年の1月には、空き家をリフォームしてシェアハウスを企画、設計、施工管理のプロジェクトをスタートさせる。2022年7月にオープンした「江原_101」がそれである。これは入居する予定の芸術文化観光専門職大学(CAT)の学生たちの意見も取り入れながら進めるユニークな経緯を辿って完成。地域にこの小さな波紋が広がっていくことを願っています。入居している学生たちも積極的に学び、創作活動を行っている頼もしい若者たち。卒業してからも戻って来られるそんな拠点になれば嬉しい。

年末から「飲みに行こうね」と約束していたのだが、それぞれ予定があってなかなか実現しない。やっとGarageのメンバーとその仲間たちが全員揃ったので実現。活きのいい刺身を前に生ビールで乾杯!

みんな一緒にやる(参加する)建築

この場合「参加する」とは、左官の久住章さんの手ほどきを受けながらモルタルを塗る左官職人、それを見学する建築家、工務店の担当者、設計の応援に駆けつけたスタッフ、ただただどんのになるのかなと期待と不安で見守るオーナー。みんな関わりながら工事は進む。

30年前にも、象設計集団の設計監修の基でドーモ・キニャーナを建築している時も、久住章さんと一緒に囲炉裏の漆喰を手で擦りながら仕上げを手伝ったり、窓ガラスに障子紙を貼る作業、ほんのちょっとした小さな作業だけど、その後、関わったことによる愛着は時間の経過とともに増してくる。当時小学生だった私の息子たちも30年経っても強い愛着を持っているようだ。「一緒にやる」って凄いこと、大切なこと。

ステンレスのメッシュを留める針金を折り曲げる。やらなくてはならない訳ではないけれど、やりたくなってくる。

浴槽に貼るタイルを検討する。濃淡複数の色のタイルの割合とその順列を検討している。まさかタイルをこんな風に決めて行くは。他ではおそらくないこと。それを自然体でやっている。