『世界の民族 超入門』 山中俊之

「教養を身につけるためには、歴史や宗教と同様に民族を理解せよ」こういうと「仕事とは関係がない」「高尚な趣味の話」と誤解されることがありますが、今日起きている世界の問題のほとんどは民族の問題と何らかの関係があります。紛争、グローバルビジネスの軋轢、格差、人種差別、ナショナリズムの台頭、国家の緊張関係からくる経済摩擦まで、すべては民族について理解しているかいないかで視座が大きく変わってきます。
『世界の民族 超入門』 山中俊之・著 (Prologueより p5)

本書は「民族って何?」というところから始まる。

人種のこと? 国・(国民)国家のこと? 国籍のこと? 言語、文化、宗教は?
と、確かに答えるのは難しい。

民族の定義については様々な定説があり、筆者は名著『民族とナショナリズム』(アーネスト・ゲルナー・著)の「国家と同じように偶然の産物であって、普遍的に必然なものではない」という指摘を引用しつつ、言語、文化、生活習慣、血統など関して、同法仲間意識を持つ集団。『ethnic group=民族』ではないかとの見解を持つ。

「民族」に対して、私たちの身近な話題、会話の中で何気なく使ったり思ったりしている言葉や認識の中にも違和感や錯覚や認識不足であったりすることはよくある。

2019年ラグビーワールドカップでは、異なる人種や民族の異なる選手が集まってチーム・ジャパンとなる。イギリス人と言っても実際はイングランド人、スコットランド人、ウェールズ人、アイルランド人から成っている。イーロン・マスクは南アフリカとカナダとアメリカの国籍を持っている、さてなに人? など、身近な話題を紹介しながら、考えを進めていく。

また「民族」という言葉から連想するのは、
民族紛争、民族移動、異民族支配、民族浄化、民族主義、多民族国家、支配民族と被支配民族、先住民族と移民
など、人類の悲惨な歴史。そしてそれは現在も民族間紛争、民族の由来する戦争は絶え間なく続いている。

「民族とは?」を問い直すことがより大切な時代に生きている。

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