

ただ、ふと落ち着いて世の中を見てみると「パレスチナとイスラエルの難しい問題はこの先どうなってしまうのだろう。コロナ流行を経て人と人の繋がりはどの様に変化したのだろう。人間が何かシステムの中に取り込まれているような、それには心身ともにどこか無理があるような」と数年前の危機的状況を脱したようにみえて、恐ろしいことは沢山あるなと思う日々です。
そんな状況だからこそ私は「劇場がその街にある有り難さ」「舞台空間で何かを体現し合えることの大切さ」を思い、今年も今一度それぞれが「劇場・舞台」についてゆっくり考えられる時間を作るためにフェスティバルを開催したいと思いました。
今回のテーマは「深いところから突き上げるあの、あの感覚とは。」ーーー
主宰者 SMILE 小倉 笑
「KYOTO CULTURAL FESTIVAL 2024」プログラムより

芸術文化観光専門職大学(CAT)の学生たちが出場すると言うので京都の「THEATRE E9 KYOTO」(京都市南区東九条南河原町9-1)に来ました。出演する9人の学生たちのうち3人はシェアハウス「江原101」の住民。普段から知っているのでどんなパフォーマンスをするのか興味津々。

昼の部の公演『詩の朗読』(演出・振付:山下残)。CAT学生9人が出演。楽曲担当は櫻井拓斗君で同じく「江原101」の住民。みんなCAT4年生(第1期生)たち。「朗読」とは言え、ただの朗読ではなく、身体を動か(ダンス)しながら読んだり語ったり。斬新な演出。
昼の部のもう一つは『SUPER COMPLEX』 SMILE(作・演出・振付:小倉笑)。本来は人間は一人一人異なる特性(個性)を持つ「多様性」の生き物。最近(安易に?)よく語られる「多様性」を改めて問い直す刺激的な作品。

夜の部の公演『HUSAIS』(Monochrome Circus)(演出:坂本公成+森裕子)。今年2月のモノクローム・サーカスの結成33周年記念公演『クロニクル Monochrome Circus』(シェアハウスの山瀬茉莉さんも出演)を観て好きになり、期待して夜の部も観ることにしました。
今回の『HUSAIS』のダンサーは小倉笑+保井岳太の二人。二人のダンスが素晴らしい。ワクワクでした。モノクローム・サーカスの若手ダンサーが代々踊り継いできた作品という。
(言葉で表現できないのが悔しい)
夜の部のもう一つの公演は『Fusion、〈ヒュージョン、〉』(劇団「飢餓の断食」演出・脚本:川村智基)。なんとも激しい演出。公演前には「性的表現、暴力、禁止用語などあり。公演中に気分が悪くなった時は退出してください」とのアテンションのアナウンス。(どんなんだろう?と緊張)。「身体も言葉も精神も全部融合させちゃえ」(演出の川村さんの作品紹介文より)。
昼夜の4作品を振り返り「深いところから突き上げるあの、あの感覚とは」のテーマ通り、どの作品からも突き上げられました。来て良かった、今後の活動も期待していきたい。
小倉 笑さんの「小劇場が消滅していくのでは」「表現の場としての舞台空間の変化は?」との演劇・ダンスの舞台芸術の現状を憂い、将来に繋げて行こうとする活動が伝わってくるフェスティバルでした。