「一気読み世界史」 出口治明・著

人類5000年の歴史のなかでも、死後にも残るグランドデザインを描き、「大帝国」と呼ぶにふさわしい帝国をつくった人物は数えるほどしかいません。西洋ならば、カエサル、フェデリーコ2世、ナポレオン、せいぜいこの3人です。
(中略)
一気読みで「大きな目」を養うというのは、わかりやすい話かもしれません。一方で「小さな目」とは、細部に目を向ける視点で、その力を一気読みで養うのは難しいのではないか、と思われるかもしれません。
でも、どんなことはないんです。大きな目を持つことで、小さい目の鋭さが増します。
『一気読み世界史』 出口治明・著

引用最後の部分。まずは、その通りだ、が実感。
「人類5000年の歴史」とは、確か出口氏の以前の著書で、人類が文字を発明し記録が辿れる年月をいう。それに、人間の脳(心)は、5000年の間にそんなに変化(進化)していないから、過去の歴史を辿ると現代が、近未来が見えて来る、とも指摘されている。まさに「大きな目」である。

西洋史でもなく、東洋史でもない。双方は全て関わりを持ちながら歴史を積み重ねる。つまり「世界史」こそが、人間の歴史を紐解く手がかかりとなる。

私にとってとても参考になったチャプター(小項目)は、

四大文明の起源はメソポタミアにある。(p24)
 ↪︎メソポタミア、エジプト、インダス、黄河とバラバラに起こったのではなく、メソポタミアの影響を受けながら派生して文明が起きた。
温暖化は大国を生み、寒冷化は国家の分裂を招く(p66)
 ↪︎ローマ帝国の繁栄は温暖化により食物も安定し、五賢帝で栄える。寒冷化を迎えると北方の遊牧民が南下し、玉突き現象が起きて民族大移動が始まる。ローマ帝国の分裂、中国では漢が滅び三国志の時代に突入。数世紀経て、温暖化が始まると西洋ではルネサンス、中国では隋・唐の時代がくる。
ナポレオンが「自由・平等・友愛」理念を拡散(兵士を鼓舞する目的)、それが後のネーションステート(国民国家)樹立に繋がる(p206)
 ↪︎ドイツ統一、イタリア統一
明治維新のグランドデザインを描いたのは阿部正弘(徳川幕府老中首座)。
 ↪︎「開国・富国・強兵」を考え、国を開く。

など、世界の歴史は、地球の温暖化(寒冷化)、民族の移動、帝国の樹立と崩壊など、西洋も東洋も双方に繋がりながら続いてきたものと理解すると(大きな目)、今起きている目の前の情勢(小さな目)がよりできるのを実感しました。