『まちづくり幻想』 木下 斉・著

地域プロジェクトにおいてよくある質問は、「何をやったらいいでしょうか」というものです。この質問は、どこかに「答え」が存在し、優れた人だけがそれを知っていて、だから間違わずに成功できるのだ、という「思考の土台」がある人の発想です。この質問そのものが間違いであり、失敗の始まりなのです。(中略)
成功する人たちはそもそもそんな考えを持っていません。成功の理由は自分たちで考え、自分たちのお金の範囲で失敗を繰り返し、改善を続けているからです。結果だけを真似ても意味がないことを、成功する人たちは理解しているのです。
『まちづくり幻想』 木下 斉・著

数年前、東京丸の内で開催した「豊岡エキシビジョン」(豊岡市を紹介するイベント)で知った著者の木下 斉氏。ストレートな発言でズバズバと地方創生事業の矛盾点を指摘し、税金の無駄遣い、地方創生の手段が目的化している現状を切り捨てていく。まさに、私自身が感じていることと多くのことが一致する。

今回の著書も多くのことを気づかせてくれました。

・地方プロジェクトは「安くして、たくさんの人に地元を知ってもらうのが善」という幻想に支配されている。「安くいいものを提供するのが美徳」の概念から脱却すべき。
・プライシングの間違いに構造的欠陥がある。→生産者(漁師、農家)が生産物を購入したことがない。都市部に向けて正しい値付けができない。(安過ぎる)
・民間が先進地(成功事例)視察の予算を行政に負担させ(または、行政が負担し)、その取り組みを真似る。うまくいかないと次のネタ探し。行政は視察のための予算を取るのが仕事。さらに国の政策は、成功事例として全国に横展開をさせようと支援制度を作る。まさに、悪循環。
・創生事業には、地元に何代も続く信用される人・事業経験を積んできた人・やるべき投資をする人の3つの軸が必要。
・第2次安倍政権は地方創生政策のため地方へ予算を配る。その行方は、地方自治体の約8割が戦略策定のコンサルタントへ外注。その外注先は東京都に本社を置く組織が約50%以上のシェア。つまり、地方に振り向けたお金の4割以上が東京へ還流していた。
・新たなプロジェクトを立ち上げる4つの原則。1.負債を伴う設備投資がないこと。2.在庫がない。3.粗利率が高い(8割程度)。4.営業ルートが明確。

ちなみに、この著書の中で紹介されている事例には知人も登場。

・メイドインジャパンの工場を直結したアパレル製品を企画販売するブランド「ファクトリエ」を立ち上げた山田敏夫社長。弊社にも来社され、NAKATA HANGERも販売していただいている。
・兵庫県たつの市で歴史的建造物を買取り再生する事業を行なっているまちづくり会社「緑葉社」の畑本康介さん。畑本さんは、但馬コネクションにも何度か参加さレました。

頑張っている知人(知っている人)も登場し「まちづくり」とは何か、実現への正しい考え方を改めて考えてみないといけない。