『地図を創る旅』 平田オリザ・著

一方、この文章は、いささか早すぎる自叙伝であり、また、若干遅すぎる、青春の覚え書という側面を持っている。過去に私が書いた文章の引用などは、多少気恥ずかしい部分もあるが、それには目をつむろうと思う。だからその意味では、この作品は、私の初期エッセイ集という役割も担っている。ともかく書き始めよう。この困難な作業の疲労感を、追憶の恥じらいが紛らわしてくれることを期待して。
『地図を創る旅』 平田オリザ・著 (「まえがき」より)

読後感はまず、久しぶりに「素晴らしい文章」に出会ったという気持ち。自己の内面を飾らず、正直に表現することは容易ではない。平田氏は、私的感情を素直に述べつつ、それを客観視するもう一人の自分を、上手く表現されている。誇張ではなく、淡々と記しながら、自分の世界感を展開していくセンスは抜群。岸田戯曲賞、鶴屋南北賞を受賞されているのも当然だ。

2019年の今年、その平田オリザさんが豊岡市日高町江原に引っ越しされてくる。
オリザさんの「地図」に「豊岡市江原」と記し、旅はまだまだ続く。

豊岡市の皆さんに一読をお薦めします。