第9回 おんぷの祭典、始まる

今年で9回目を迎えた「おんぷの祭典」(正式名称:子どもたちが豊岡で世界と出会う音楽祭)が始まりました。

2013年に中澤宗幸さんと出会う。代々木にある(株)日本ヴァイオリンの工房にノーアポで飛び込む。運良く、北京から帰国したてのご本人にお会いすることができました。音楽談義はあっという間に2時間以上に及び、宗幸さんの音楽に対するご経験、弦楽器の修復・チューニングを通じて世界の一流演奏家と接した時のお話など、興味深いお話ばかり。

「これからの時代は一流の音楽家こそ街へ出て音楽を奏で、街角に音楽流れ、市民が親しむ」この宗幸さんの一言に心が揺れました。そして、但馬コネクションにゲストとしてお迎えし、中澤宗幸さんのお話を但馬の仲間と一緒に聴いたところから、トントンと事が進み、1年も経たずに第1回目の「おんぷの祭典」が始まりました。中澤さんの音楽に対する思いとそれに共感する熱き仲間の思いが響き合った。

コロナ禍で3年間の縮小版コンサートを余儀なくされたが、4年ぶりに客席をフルに並べ、稽古堂イブニングコンサートが開催できました。開演前の画像なので、空席が見えますが、本番が始まるともちろん満席。9年間で「おんぷの祭典」を楽しみにしていてくださる市民の方が増えてきたことを実感。

これから6日間、豊岡のあちこちで音楽が流れる。

安らかに、坂本龍一

吉本隆明+坂本龍一 『音楽機械論』裏表紙より

坂本龍一 逝く。TVのニュース速報で知る。(3月28日逝去)
誰もいつかその時はやってくる。今年に入って私の好きなミュージシャンの訃報が続く。

坂本龍一がデビューしたのは1970年代後半。ちょうど私の学生時代と重なる。ジャズが好きでコンサートやレコードを買い漁っていた頃。

現代音楽、民族音楽、テクノポップなど、ジャンルを飛び越えた音楽を展開。いつも気になるミュージシャンとして私の中に存在していました。

聴くばかりでなく、坂本龍一の書籍はほとんど読んできた。

『EV. Cafe 超進化論 〜村上龍+坂本龍一』(1985年発行)
 ・吉本隆明、河合隼雄、浅田彰、柄谷行人、蓮實重彦、山口昌男との対談集
  ↪︎対談、鼎談相手の顔ぶれを見ただけで内容(難解?)が見えてくるが、再読してみたくなる。

『音宅機械論〜吉本隆明+坂本龍一』(1986年発行)
 ・「現代音楽の落とし子たち」「ノイズの音楽」「ジョン・ケージ」「純文学としての中島みゆき」「戦メリのメロディ」「ユーミンは言葉をメロディに近づける」など、今、改めて読んでみたい話題が満載だ。

『音楽と生命 福岡伸一+坂本龍一』(2023年発行)
 ・まだ1週間ほど前の3月29日の新刊。まだ読んでいないが、福岡伸一さんとの対談は読む前からワクワクだ。タイトルにもある「生命」は坂本龍一にとっても覚悟のテーマだったと想像します。

坂本龍一的音楽へのアプローチは、実験的な危うさ、抒情的なメロディ、静謐な音、時にポップで、時にはアバンギャルドで、刺激に満ち溢れていた。それはそのまま「坂本龍一的人生の道のり」だったのでしょう。

安らかに。
合掌。

「映像の世紀」『パリは燃えているか』〜 加古 隆

QUARTETIII 組曲「映像の世紀」 加古 隆(音声)

加古 隆 : piano
相川麻里子 : violin
南かおり :viola
植木昭雄 :cello

1 パリは燃えているか~オープニング
2 神のパッサカリア
3 シネマトグラフ
4 パリは燃えているか~間奏曲
5 時の刻印
6 マネーは踊る
7 愛と憎しみの果てに
8 黒い霧
9 パリは燃えているか~ピアノ・ソロ
10 ザ・サード・ワールド
11 睡蓮のアトリエ
12 パリは燃えているか~エンディング
13 花は始めも終りもよろし
14 アヴェ・マリア~聖なるもの、母なるもの~

Recorded on Apr.26-28 , 2017

『パリは燃えているか』
「映像の世紀」のテーマ曲であり、加古さんの代表曲。

1944年8月、敗色濃厚となったナチス・ヒットラーが、占領地パリを燃やし尽くせと最後の抵抗をパリ防衛司令官に命じたが司令官は応じなかった。2日後、ヒットラーはベルリンで “Brennt Paris ? “(パリは燃えているか?)と叫び、問いかけた。

このエピソードだけで、20世紀悲惨な戦争の世紀を呼び起こす。

加古さんは、自身が音楽を学び、文明・文化の象徴としてのパリ、それを燃やし尽くせという戦争という罪と愚かさを、この「パリは燃えているか」で表現している。

今、ピアノでこの「パリは燃えているか」に挑戦。なんとかこの曲を想いを込めて弾けるようになろうと奮闘中。

2013年10月27日 サントリーホール

実は、加古隆さんとは、いろいろとご縁がある。

学生時代にジャズと出会いよくライブにも行ってた頃、新宿ピットインでパリ音楽院の留学から帰国したての加古さんのライブをたまたま聴いていた。その約10年後に、豊岡市(当時日高町)へピアノを寄付させていただいたのがご縁で加古隆さんのコンサートをそのホールで企画。またその数年後に自宅でも加古さんのピアノコンサートを企画。親しくしていただく。

サントリーホールでのコンサート後、楽屋前の廊下でのショット。
(超・プライベートな写真なので小さめに)

CoCo壱番屋にて〜創業者の記事を読む

お昼をどこかで食べよう、と孫Kと二人で出かける。「どこにしよう?あそこかな、こっちかな」と言いながら豊岡市街地へ車を走らせる。クルクルとあちこち回りながら、結局「カレーが食べたい」との一言でCoCo壱番屋へ。食べて、ビールとコーヒー豆を買ってすぐに帰るつもりだったので本も持たず。入り口の「雑誌・マンガ本棚」にたまたまあったCoCo壱番屋の雑誌を手にする。

パラパラとページを捲ると創業者の宗次徳二さんの写真が目に飛び込む。

奥様と二人三脚で開店した喫茶店から始まって、カレー専門店を開業。創業時にお客はほとんど来ない時にでも、「このまま続けていれば絶対に大丈夫」との信念を持って継続。やがてその信念は身を結びCoCo壱番屋は日本一のカレー専門店になる。

その原動力は、『お客様 笑顔で迎え、心で拍手』という標語が表す通り、宗次氏の徹底した「顧客第一主義」。尊敬すべき素晴らしい経営者の一人だと思います。代表引退後は、積極的に社会貢献活動をされている。

特にクラシック音楽の普及支援活動として「宗次ホール」の運営、ストラディヴァリウスのヴァイオリンなどの世界の名器を演奏家に貸与されている活動は特筆もの。どういう経歴の人だろうと注目していました。

幸いにも、日本ヴァイオリンのヴァイオリン・ドクター中澤宗幸さんのご縁でこれまで2回、お目にかかったことがある。一つは、チャイコフスキーの「ピアノ協奏曲第1番」を池袋の東京藝術劇場で。演奏者は、後にショパン国際ピアノコンクール第2位になった反田恭平さん。

振り返ってみれば、凄すぎる貴重な時間でした。

ウィーン・リング・アンサンブル〜ニューイヤー・コンサートがやって来た

倉吉未来中心大ホール(鳥取県倉吉市)での「ウィーン・リング・アンサンブル」のニューイヤー・コンサートに行った。きっかけは、昨年11月に鳥取市で開催された経済同友会の「日本海沿岸経済サミッ」ト」に参加した時に上のポスターを何気なく見てコンサートを知ったこと。厳密に言うとポスターの顔ぶれを見るとなんと知り合いのシュテファン(チェロ)が写っているのを発見!本人とメールで確認すると「新年は日本行くよ」との返事。じゃあ、倉敷へ行こう、となりました。(大阪、東京、名古屋でのコンサートもあるが日程の都合で倉吉へ)

当日プログラム・メンバー紹介

ウィーン・リング・アンサンブルのメンバー9名のうち、元旦に行われたウィーンフィルのニューイヤーコンサートで演奏したメンバーが5名。あとのメンバーもウィーンフィルのメンバーだ。元旦にCATの学生たちとライブの映像を一緒に観て、その1週間後に、目の前で生でメンバーの演奏を聴けるなんて、それだけで感動もんです。

ダニエル・フロシャウアー(ヴァイオリン、ウィーンフィルの楽団長)、シュテファン・ガルとマイヤー(チェロ)、ミヒャエル・ブラデラー(コントラバス)、カール=ハインツ・シュッツ(フルート)、ダニエル・オッテンザマー(クラリネット)がすぐそこに。(私の席は前から5列目)

本番直前のリハーサル後、ロビーでシュテファンと再会。

4年半前にウィーンで会い、シュテファンの自宅でBBQをご馳走になったこと、家族はみんな元気か?、そして20年前ビバホール(養父市)のチェロコンクールでの出来事のこと、立て続けに話す。「全て忘れられないことばかりだよ」と。

まさにウィーンがやって来た1日でした。

柴田花音 チェロリサイタル〜養父市立ビバホール

昨年の第14回ビバホールチェロコンクール第1位の柴田花音さんの凱旋コンサート。

チェロコンクールは行政とボランティアスタッフで運営している市民手づくりのコンクール。我が家も2000年〜2012年(コンクールは2年毎)に出場者のホームステイをお引き受けしてた関係で、毎回招待券が届く。

招待券があるので行ったと言うのが正直なところですが、柴田花音さんの素晴らしい演奏に完全にノックアウトされる。太く逞しい音色、情感たっぷりな響。若手(22歳)のチェリストとして溌剌とした演奏が心に迫ってきました。ドキドキしてくる圧倒的なコンサートでした。

10月、やぶ市民交流広場ホールでの宮田大さん(第6回2004年第1位)のチェロ・リサイタルに引き続きのチェロコンサート。チェロは大好きな楽器、昔からレコードやCDでパブロ・カザルスやジャクリーヌ・デュ・プレ、ヨーヨー・マ、ミッシャ・マイスキーなど、チェロのアルバムは結構持っている。

コンクールでのホームステイを引き受けた第4回(2000年)は、ドイツから参加のベンヤミン(B.S.Grutter)が第1位で現在はドイツのオーケストラで活躍、第5回(2002 年)は、ウィーンから参加のステファン(S.Gartmayer)は第2位で、現在はウィーンフィルで活躍している。

二人とは、現在も連絡を取り合う友人。2018年にウィーン訪問でステファンと会い、「私にとって特別なウィーンの1日」(2018/10/02ブログ)となりました。

上野星矢 フルート・リサイタル〜やぶ市民交流広場ホール

養父市芸術監督 青柳いずみこプレゼンツ「珠玉のクラシックシリーズ第2弾」と銘打ったコンサート。第2弾は「上野星矢 フルート・リサイタル」。

10月30日の第1弾「宮田大チェロ・リサイタル」も素晴らしい演奏に酔いしれましたが、今回は、青柳いずみこさん自身のピアノ演奏も聴けるコンサートということで楽しみにしていました。

サティの『3つのグノシエンヌ』(ピアノソロ)で静かに始まり、ルーセル『笛吹たち』、ドビュッシーの『「牧神の午後」への前奏曲』と続く。フランス音楽に造詣深い青柳さんらしい選曲。フルートもフランス音楽にぴったりのイメージがする。(私見ですが)

ドビュッシー『シランクス』(フルートソロ)、『月の光』は、川島麻実子さんのバレエと共演で第1部が終了。第2部もカプレ、フォーレ、プーランクと、フランスの作曲家の曲が並ぶ。弦楽器で演奏するロマン派音楽とはまた違ったアンニュイな気分というか愁いを感じる演奏を楽む。

フランス音楽もいいですねー。

「宮田大 チェロ・リサイタル」 at やぶ市民交流広場ホール

照明を落としたままのステージに2人の演奏家が登場。暗いまま演奏が始まる。
ドビュッシーの『月の光』。
静かに滑らかにチェロがメロディを奏で、ピアノがモザイクのようにキラキラと舞う。

つづく2曲目は、サン=サーンスの「白鳥」。夢見心地の優雅な演奏にうっとり。

第一部はそれぞれのソロ演奏と2人の演奏で小品楽曲。休憩後の第二部では、ブルッフの『コル・ニドライ』。ユダヤ教の音楽から借用した旋律を持った荘厳な楽曲。最後は、ファリャの『恋は魔術師』。歌入りのバレエ音楽をチェロに置き換えて編曲された。

養父市ビバホールで開催されるチェロコンクール第6回(2004年)で第1位の宮田大さん。数回繰り返されたアンコール演奏で、最後は『故郷』。宮田さんにとっての演奏家活動の原点でしょうか。

アンコール曲の中で、特に気に入ったのはメキシコの作曲家ポンセの『エストレリータ』。今、改築中の3階から見る風景を思い浮かべながら聴く。

昨年オープンした「やぶ市民交流広場ホール」は、豊岡演劇祭の公演で館内に入ったことがあったが、実際のコンサートを聴くのは初めて。650席で素晴らしい音響。クラシックのコンサートにはピッタリのホール。

養父市芸術監督にされた青柳いづみこさん。フランス音楽に造詣が深いピアニストでありエッセイスト。エッセイも何冊か読み、もう30年ぐらい前になるが、青柳さんの祖母の実家(養父市八鹿町宿南、茅葺き屋根)での青柳さんのピアノコンサートにも行ったことがあります。養父市とご縁のある青柳さん。これからのプロデュースに大きな期待を寄せています。

『古くて素敵なクラシック・レコードたち』 村上春樹・著

レコードを集めるのが趣味で、かれこれ六十年近くせっせとレコード屋に通い続けている。これは趣味というよりは、もう「宿痾」に近いかもしれない。僕はいちおう物書きだが、本にはなぜかそれほどの執着はない。しかしレコードに関しては、認めるのはどうも気恥ずかしいのだが、それなりの執着があるみたいだ。

『古くて素敵なクラシック・レコードたち」
なぜアナログ・レコードなのか? (p10)

村上春樹と言えばジャズ、と思い浮かぶ(若い時にジャズ喫茶もしていた)が、クラシック音楽の造詣も深い。まあ、私がどうのこうの解説するのもおかしい。彼の小説を読み、ジャズの蘊蓄を学び、いろんな知的興味を引き出してくれたのだから。

「中古レコード店に行くとまずジャズのコーナー、それからクラシックコーナーへ。」
「レコード・コレクションは、ジャズ7割、クラシック2割、ロック・ポピュラーが1割」
「ジャケ買い、安いから、クラシックではコンプリート蒐集しようの目論見はない」
「名盤には興味し、ダメ元でできるだけ安く買って気に入らなければ処分、気に入れば残す」

などなど、村上の行動パターンを知ると、私の学生時代を思い出す。新宿の中古レコード屋『UNION』に暇さえあれば通って、レコードをチェックしたものです。私の場合は主にジャズだったが、アルバイト代がほとんど全てがレコードに消えていた。私の場合は、ジャズ8割、ロック1.5割、クラシック0.5割かな。

と、言うことでこの「古くて素敵なクラシック・レコードたち」には、ほとんど知られていない(私が知らないだけかもしれないが)演奏家、指揮者も多数登場する。

これらを聴くのは、以前だとほとんど不可能(レアなものばかりなので)だったが、今は、アップルミュージックで検索して結構見つかる。村上のクラシック・ワールドを読みながら、ダウンロードして聴く。「古」(いにしえ)と「今」が混じり合う、なんだかすごい時代になっていますね。

全部で100曲紹介されています。1曲3〜4ページの村上解説を読みながら、一つの曲を異なる演奏家の演奏を聴き比べるのも楽しい。お試しあれ。

ベートヴェン「運命」〜ピアノとダンスの初顔合わせ

城崎国際アートセンター(KIAC)「おんぷの祭典」のコラボによるピアノとダンスのパフォーマンスの稽古がいよいよ始まった。その初日の顔合わせと稽古に立ち会いました。

ダンスは森下真樹さん。振付家・ダンサー、世界30都市でソロ作品を上演、「ダンスカンパニー森下スタンド」を主宰。東京や他の都市での公演をもっと早く観たかったのですが、コロナの影響で全てキャンセル。やっとKIACでご挨拶できました。

ピアノは碓井俊樹さん。東京芸術大学を経て、ザルツブルグ・モーツァルテウム芸術大学で研鑽。ウィーンと東京を拠点に世界中を飛び回り演奏活動。「おんぷの祭典」の音楽監督としてもう6年ぐらい親しくさせていただいる。

今回は、ベートーヴェン 交響曲第5番『運命』全楽章をピアノの演奏で踊る。
初稽古を見学させていただき、その期待は膨らむばかりです。

公演は、
日時 : 2020年7月26日(日) 14:00〜
会場 : 城崎国際アートセンター・ホール
料金 : 1,000円
問合せ: KIAC(9:00〜17:00) tel : 0796-32-3888