『いきづらさについて考える』 内田 樹・著

リタイアすることの最大のリスクは、「現場を失う」ことです。メディア経由の情報しか触れることができず、加工される前の「生もの」の現実との接点を失うことです。それについて退職者は十分に危機感を持った方がいい。
『生きづらさについて考える』 内田樹・著 (「人生100年時代を生きる」p267)

納得である。加工品を味わい、その美味しさ(素晴らしさ)を語ってもどこか味気ない。「生」の素材に触れ、自分で加工する、この行為が大切だ。

ある程度の地位に達すると、実生活では、もう誰からも叱られるということがなくなってしまう。だから、自分から叱られる現場を探して、叱られるために月謝を払う。(p269)

「リタイア後には、お稽古事をやるのが良い」とも。「道」がつくものが良さそうだ。柔道、剣道、弓道は、体力的には困難だが、茶道、書道、能楽などの精神性、身体訓練など有効そうだ。「日本文化」にもとても興味がある。どうも今の私には「西洋音楽」の方が優先している。なんとか、両立、どこかで合体ができないものか。

以下は、読書メモより

思考停止
•組織的危機の到来を警告する人間は日本社会では嫌われる
•→原発
•最悪の事態が到来するまで何もしない
•それなりに合理的な解
•日本人は最悪の事態を考えると途端に思考停止になる

コミュニケーションとは違いを認め合うこと
•SNSで子どもたちのコミュニケーションは便利になった
•強い同質化圧が働いている
•コミュ障
•共感⇆違和感
•理解⇆共感
•意味不明⇆腑に落ちる
•一度決まったキャラを変更するのは容易ではない

人文学は生き延びる道を探す学問
•扱う素材の時間軸が長く、空間も広い。
•考古学や歴史学
•民俗学や地域研究、異文化の国
•今、ここ、私と言う基準では測れないことを学ぶ

大岡裁きは日本人の生存戦略
•日本人は「調和」のうちに安らぐことを、ヨーロッパ人は「自由」のうちに安らぐ

「文喫」〜入場のある本屋(六本木)

六本木を歩いている。そうだこの辺りに本屋(青山ブックセンター)があったから寄ってみよう。と、行ってみると新しい本屋さん(らしき)お店に変わっている。お店の名は「文喫」(ぶんきつ)。入場1500円の有料本屋さん。好奇心にかられて入ってみた。

本の並びは大きく変わらないが、その本を何冊かピックアップしてテーブル席につく。1杯目のコーヒーかティがサーブされている。

入場料ありだが、週末ともなると1日中満席だという。
閲覧室のデスクは、ゆったりとした椅子、デスク照明、ネット環境、集中できる空間と、読書には快適だ。

「文喫」(六本木)

『京大変人講座』 酒井 敏/他 ・著

ナマコを採ってきて、お米をつくっている人に「ごはんだけだとさみしいでしょう?これ、美味しいですよ〜、ごはん進みますよ〜」と言って”高い金で”ナマコを売りつければいいのです。その収入の中から自分はお米を買って、初めて経済が回るのです。
 つまり、世の中の発展のためには、全員がお米をつくってはいけないのです。ナマコを採るべく冒険に出かける人間が必要です。当然、全員ナマコ漁師になってしまうと、ごはんが食べられなくなりますから、こめをつくってくれる人もありがたい存在です。
 ですが、お米の農家さんが多数派だと仮定すると、私たちはあえてナマコを採りにいくリスクを取りたいと思うのです。
『京大変人講座』 酒井敏/他・著 (p268)

紹介文が長くなってしまいました。
変人の大切さを「ナマコ理論」で説明する、まさに「変人」の横顔が滲み出ているのでこの部分を抜粋しました。^ ^

ノーベル賞受賞者をたくさん輩出したまさに「京大」の真骨頂だろう。

6名の京大教授(准教授、助手含む)が登場し、それぞれの専門分野についての授業がある。「地球」「経営」「法哲学」「社会デザイン」「生物」「予測」。

それぞれ「目からウロコ」の新事実、視点、思考、論点が満載。

どれも面白いが、私は特に「なぜ鮨屋のおやじは怒っているのか」(経営の教室)がオススメ。

「おもてなし」は英語で「ホスピタリティ」。語源をたどるとギリシャ語で「ホスペス」(「見知らぬ者」、「力を持つ」の組み合わせたもの)とつまり「敵意ある見知らぬ者には対して力を持つ」遠言う意味。なぜこれが「おもてなし」なのか。

文化人類学的に解くとどうなるのか、どうぞ読んでみてください。

『人口減少社会の未来学』 内田樹・編

 「縮む」イメージで語られがちな日本の未来は、決してグルーミーなわけではない。少なくとも、「熱い近代」の呪縛から解き放たれ、そのソフトパワーを外交戦略重視の平和主義へと転換し、低成長=定常化を受け入れ、減災に優れた地域分散型の国土をネットワーク的に結びつけ、優れた文化的付加価値を多品種少量生産システムとリンクさせるサイクルを築ければ、日本はなだらかに斜陽を謳歌する成熟社会へと移行することができるはずだ。
『人口減少社会の未来学』内田樹・編
(「斜陽の日本」の賢い安全保障のビジョン」姜尚中 より p287)

日本はすでに「人口減少」の道を辿っている。これからの「人口減少社会」の実相について様々な分野で活動している識者からの寄稿文を内田樹氏がまとめた論集。

生物学者、経済学者、政治学者、建築家、劇作家、保育士、コラムニストなど、それぞれの視点で語られていて、幅広く、そして深く、人口減少時代の日本が浮き彫りにされる。

建築家の隈研吾氏は、建築業界を江戸時代の武士道に喩えて、戦後の高度成長を成し遂げた立役者である建設産業、重厚長大産業が低成長の現代も脇役へ回ることなく主役であり続ける所に課題があると指摘。

イギリス在住コラムニストのブレイディみかこ氏は、ヨーロッパの緊縮財政政策が引き起こす厳しい現実、緊縮財政は返って借金を増やしている事実、新たな「ニューディール」政策の台頭など、日本人の人口減少に対する楽観論に警鐘を鳴らす。

劇作家・演出家の平田オリザ氏は、「若い女性に好まれない自治体は滅びる」として、豊岡市の「教育と文化施策」を紹介。18歳までに自分の道を選択できる教養、考える力を身につける自己決定能力を磨く。世界一流のアートに触れる文化政策が豊岡市の基本となっている。(平田オリザさんは、この秋には豊岡市に引っ越して来られるので、人口減少社会をより身近なところで議論してみたい。)

冒頭に紹介した姜尚中氏の「熱い近代」から「成熟社会」への移行が、現在の私の問題意識に答えてくれている。

他のそれぞれの寄稿者の論考文もぜひ、読んでみてください。

『日本人の勝算』 デービッド・アトキンソン・著

私の仮説ですが、アメリカは経営者に高額の報酬を与えることによって、生産性向上の動機を与えようとしているように見えます。それに対して欧州では、人口動向と政治的な思想の違いによって、最低賃金の引き上げによる底上げを図って、経営者を刺激しようとしていると解釈しています。

同じくマッキンゼーが発表した「Why management matters for productivity」というタイトルのレポートでは、生産性向上の最大の足かせは経営者だと分析しています。とりわけ、各国の経済の大半をしめる中小企業の経営者の質が低いことが問題だと指摘しています。
『日本人の勝算』 デービッド・アトキンソン・著 (p166)

「勝算」。戦争ではない。サブタイトルに「大変革時代の生存戦略」とあるように、「人口減少×高齢化×資本主義」の時代の企業生き残りのための指南書である。ここの「資本主義」とは? マネタリズム、格差問題、自由貿易の危機、そういった資本主義の変質といったところか。

これまでの経済成長が人口増加による要因が大きかったが、先進(成熟)国家では、「生産性向上」こそが経済成長の原動力。では、どうしたら生産性向上が果たせるのか?それは「最低賃金の引き上げ」という考えである。

最低賃金引き上げの6つの利点
・ もっとも生産性の低い企業をターゲットにできる(経営を変える動機)
・ 効果は上に波及する(最低賃金をあげると、その上、その上、と波及する)
・ 消費を押し上げる(賃上げによる消費増大)
・ 雇用を増やす可能性がある(就労意欲が生まれ、労働市場への参加率向上)
・ 労働組合の弱体化(最低賃金アップにより労働分配率を向上)
・ 生産性を上げる「強制力」が働く(利益圧迫、価格転嫁困難、生産性に目が向く)

なるほどの因果関係だ。だが「風が吹けば桶屋が儲かる」の小話にもあるように、直接的、速攻的な因果ではない。一中小企業がどこまでそれを信じ、コミットできるのかが重要。新たな競争が始まる。

『地図を創る旅』 平田オリザ・著

一方、この文章は、いささか早すぎる自叙伝であり、また、若干遅すぎる、青春の覚え書という側面を持っている。過去に私が書いた文章の引用などは、多少気恥ずかしい部分もあるが、それには目をつむろうと思う。だからその意味では、この作品は、私の初期エッセイ集という役割も担っている。ともかく書き始めよう。この困難な作業の疲労感を、追憶の恥じらいが紛らわしてくれることを期待して。
『地図を創る旅』 平田オリザ・著 (「まえがき」より)

読後感はまず、久しぶりに「素晴らしい文章」に出会ったという気持ち。自己の内面を飾らず、正直に表現することは容易ではない。平田氏は、私的感情を素直に述べつつ、それを客観視するもう一人の自分を、上手く表現されている。誇張ではなく、淡々と記しながら、自分の世界感を展開していくセンスは抜群。岸田戯曲賞、鶴屋南北賞を受賞されているのも当然だ。

2019年の今年、その平田オリザさんが豊岡市日高町江原に引っ越しされてくる。
オリザさんの「地図」に「豊岡市江原」と記し、旅はまだまだ続く。

豊岡市の皆さんに一読をお薦めします。

『縄文時代の歴史』山田康弘・著

縄文時代と現代を比較し、縄文時代をある種の「楽園」「ユートピア」として語ろうとする論調の中では、しばしば「極端に少ない人口」という観点が抜け落ちていることも、あわせて指摘しておきたい。人口の増加と集中による社会変化のあり方は、これまでに述べてきた通りである。また、縄文人はお互いが支え合い、助け合って生きてきたという話が出されることもあるが、それは個人間に多少のあつれきがあったとしても、基本的にはいつの時代も一緒で縄文時代に限ったことではないだろう。過去に対する過度の美化には慎重でありたい。
『縄文時代の歴史』 山田康弘・著

上記にあるように、筆者は縄文時代の歴史を極めて冷静に分析し、現代社会の矛盾と安易に対比することに懸念を持っている。(この視点は、私に対する警告でもあった)

次々に発掘、科学的な解析、調査が進む縄文時代。確かに私が学生時代に学んだ縄文時代とはかなり異なってきているのを感じる。

縄文文化の本質として、
・ 繁縟な装飾を持つ土器、土偶、土器
・ 狩猟採取経済
だけでなく
・ 急激な温暖化と冷涼化を伴いながら総体的には安定した気候
↪︎ 日本列島の各地方、各地域で個性的な環境適応が起こる
↪︎ 自然の資源化とその利用技術の発達
↪︎ 定住生活と居住形態
↪︎ 生業形態、集団構造、精神文化の発達
↪︎ 資源交換ネットワークの発達

「気候」「各地方で異なる」「交換ネットワーク」で考えていくのがとても興味深い。その視点でさらに調べてみたい。

『花おりおり』〜私の愛用書

ブログ “KOH’s VIEW”では、庭の植物を紹介しています。「紹介」というよりも、自分自身がちゃんと身の回りの草花をもっと知りたい、調べてみよう、という思い出書いています。

○○属、○○科だけでは、面白くないので、その花の名の由縁や、特徴、生活の中の関わりなど、歴史、風土なども知ってみたい。

そんな思いにぴったりの本がこの『花おりおり』シリーズ。
14年前にブログを書き始めた時から、愛読(愛用)書となっています。

全5巻。1ページに二つずつ紹介してある。

まだまだ「知らない」「知りたい」「調べたい」草花がいっぱい。
今年も『花おりおり』には、目一杯、お世話になりそう。
四季おりおり、花おりおりですね。

『花おりおり』 湯浅浩史・著
『花おりおり その二』
『花おりおり その三』
『花おりおり その四』
『花おりおり その五』

『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』山口周・著

まず「論理と理性」に軸足をおいて経営をすれば、必ず他者と同じ結論に至ることになるり、必然的にレッドオーシャンで戦うことにならざるを得ない。かつての日本企業は、このレッドオーシャンを、「スピード」と「コスト」の二つを武器にすることで勝者となった。しかし、昨今では、この二つの強みは失われつつあり、日本企業は、歴史上はじめて、本当の意味での差別化を求められる時期に来ているということです。
『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』 山口周・著

昔から日本の経営は、左手に「そろばん」右手に「情け」が大切だとよく聞いた。「論理」と「感情」ということになるのだろう。MBAではスタディケースを論理的に考え、答えをを導き出す。いわゆる「正解」はないにせよ、説得ある「解」には論理的裏付けがないといけない。

「論理的結論」が「正解」を量産し、コモディティ化し、やがてレッドオーシャンとなる。著者は、そこに焦点をあて、経営には「美意識」つまり「真・善・美」が必要だと説く。

「真=直感」「善=倫理・道徳」「美=審美完成」という、主観的な内部のモノサシを持つことが大切であると。

単なる「経営ノウハウ本」ではなく、高度成長後の価値基準の変化、グローバル競争の本質は何か、など考えさせられる良書。じっくりと考えてみたい。

『一流の人は、本のどこに線を引いているのか』土井英司・著

「そうだ、その通り!自分の考えは間違っていなかった」と感じる箇所に線を引くのは、単なる「自己陶酔」にすぎない。自分が「正しい」ことを確認したところで、パワーアップの糧にならない。逆に、読んだときには多少の嫌悪感があっても、どういうわけだか”気になる”1行に出会うことがある。こんな1行には、思い切って線を引いてみたい。線は、新しい発見や役に立った箇所、そして自分の考えと「ちがう」箇所に引くことで、成長の糧になるのだ。
『一流の人は、本のどこに線を引いているのか』土井英司・著

これはこの著書の帯の折り返しに書いてある抜粋。私が線を引いたとしても「ここ」というところが抜粋されている。嫌悪感どころか親近感なので線を引かなくても良いのかも。(^ ^;;

土井氏は、先日の経営者セミナーでとても興味深いお話を聴いたので、さっさくその著書を読ませていただいた。経歴は大卒後、日経BP社を経てAmazon.co.jpの立ち上げに参画、その後独立して著者、著書のプロデュースを手掛ける。

マーケティングの目的は「セリングを不要にする」ことだ。

巻末には、土井氏が読んだビジネス書から44冊を選び出し、土井氏が引いた「線」の箇所が紹介されている。その書籍のポイントを端的に知ることができる。その中で私は10冊ぐらいしか読んでいませんが、これから「深く知りたい」「新しく知りたい」テーマで読んでみたい。

ちなみに『人生がときめく片付けの魔法』(近藤麻理恵・著)の海外出版の仕掛人でもある。