『人口減少社会の未来学』 内田樹・編

 「縮む」イメージで語られがちな日本の未来は、決してグルーミーなわけではない。少なくとも、「熱い近代」の呪縛から解き放たれ、そのソフトパワーを外交戦略重視の平和主義へと転換し、低成長=定常化を受け入れ、減災に優れた地域分散型の国土をネットワーク的に結びつけ、優れた文化的付加価値を多品種少量生産システムとリンクさせるサイクルを築ければ、日本はなだらかに斜陽を謳歌する成熟社会へと移行することができるはずだ。
『人口減少社会の未来学』内田樹・編
(「斜陽の日本」の賢い安全保障のビジョン」姜尚中 より p287)

日本はすでに「人口減少」の道を辿っている。これからの「人口減少社会」の実相について様々な分野で活動している識者からの寄稿文を内田樹氏がまとめた論集。

生物学者、経済学者、政治学者、建築家、劇作家、保育士、コラムニストなど、それぞれの視点で語られていて、幅広く、そして深く、人口減少時代の日本が浮き彫りにされる。

建築家の隈研吾氏は、建築業界を江戸時代の武士道に喩えて、戦後の高度成長を成し遂げた立役者である建設産業、重厚長大産業が低成長の現代も脇役へ回ることなく主役であり続ける所に課題があると指摘。

イギリス在住コラムニストのブレイディみかこ氏は、ヨーロッパの緊縮財政政策が引き起こす厳しい現実、緊縮財政は返って借金を増やしている事実、新たな「ニューディール」政策の台頭など、日本人の人口減少に対する楽観論に警鐘を鳴らす。

劇作家・演出家の平田オリザ氏は、「若い女性に好まれない自治体は滅びる」として、豊岡市の「教育と文化施策」を紹介。18歳までに自分の道を選択できる教養、考える力を身につける自己決定能力を磨く。世界一流のアートに触れる文化政策が豊岡市の基本となっている。(平田オリザさんは、この秋には豊岡市に引っ越して来られるので、人口減少社会をより身近なところで議論してみたい。)

冒頭に紹介した姜尚中氏の「熱い近代」から「成熟社会」への移行が、現在の私の問題意識に答えてくれている。

他のそれぞれの寄稿者の論考文もぜひ、読んでみてください。

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