『ベートヴェンを聴けば世界史がわかる』片山杜秀・著

フランス革命のあと、元々はルイ14世が宮廷の音楽家たちを養成するために造った王立声楽・朗読学校が改編され、1795年に広く市民社会で活躍する音楽家も育てる音楽院となります。それはこれまで王に近い階級だけが独占していた音楽への道を、広く開放するものでした。その意味では、1793年に開館され、民衆にも美術品を公開したルーブル美術館と同様、市民への「高級芸術」の開放だったのです。王のための芸術が、市民のための芸術に変じたのです。
『ベートーヴェンを聴けば世界史がわかる』片山杜秀・著(p176)

音楽(クラシック音楽)の歴史を理解するキーワードを駆使しながら、ヨーロッパ史を中心に歴史を辿る。

モノフォニー(単旋律)=中世、グレゴリオ聖歌、声楽(アカペラ)、一つのメロディをみんなで、教会音楽、神の権威と秩序

ポリフォニー(多声音楽)=12世紀ごろ、器楽音楽・伴奏、十字軍、イスラム文化、ローマ教会の弱体

コラール(賛美歌)=16世紀、宗教改革、ルター(聖書のドイツ語翻訳、作曲)、独唱・独奏、個人の祈り、単純化へのプロセス、やがて自由主義・民主主義へ

オペラ=16世紀、古代ギリシャ演劇の復活、コロス、現世、世俗

ロマン派=大都市、革命、戦争、王侯貴族から市民へ、産業革命、成熟した近代市民、娯楽、高級芸術、音楽学校=アカデミズム

ワーグナー=民族主義、近代+土着→国民楽派、普仏戦争、総合芸術

20世紀音楽=洗練→楽器・音色の均質化、ピアノの発達、典雅や微妙なニュアンス、教養ある市民、超人志→ニーチェ、霊的、近代科学、世紀末、無調音楽、幻想、死、前衛音楽、リズムの破壊

大まかにキーワードを拾ってみました。それぞれの歴史・時代を背景に、いろんな作曲家、作品が浮かんできますね。そんなことを思い浮かべながら聴くのもまた楽しみです。