会社見学に思うこと〜インターンシップの学生たち

但馬へのUターン・Iターンを薦めるための「インターンシップ in 但馬」(地元銀行が主宰)の学生たちを迎えました。

今年は、我が社でのインターンはお引き受けしていませんが、「会社見学」として学生たちを受け入れました。

「ハンガー」と言ってもピンッとこないでしょうから、ハンガーの生産工程の一部を見学してもらう。

営業チーフがパワポで説明

会議室にて、会社説明を行う。

学生さんたちからの質問は、
Q.「豊岡でどうして世界に輸出するハンガーができるのか?」
→「最初から”世界”を狙っていた。但馬の真面目で丁寧な”モノづくり精神”を発信。」

Q.「新入社員の意見は経営幹部に届くのか?」
→「もちろん届く。むしろ、新人の新鮮な意見や質問がベテラン社員の”当たり前”に刺激を与える。」

特に、私が伝えたかったことは、

「グローバルなビジネスには、地元(ローカル)を知る、活かす、愛することが大切」

「コミュニケーションは、いつも”自分自身”と会話し、自分のやりたいこと、大切にしているものは何か、を考えてておくこと。だから相手を理解する努力も大事にして欲しい」

「地方には、やりがいがあって入りたい会社がない、ってことはない。”田舎”は面白い。価値観の問題ですよ。人生にとってどんな”回り道”も決して無駄にはならない。やりたいことに目いっぱいチャレンジして欲しい」

雨と川と霧と秋

夜遅く奈良からの帰り、大阪で一泊。

今ごろ自宅は、台風は過ぎ、秋雨前線の雨が秋を運んで来て、、、
なんて想っていたら、朝一番に乗らないと特急が停まるかも、と連絡が入る。

えっ?と思ったが、帰って家の裏側を流れる円山川を見るとこの水かさ。
(先日の台風襲来直前の円山川)

午後の気温は22℃。
確かに涼しくなった。

裏山に霧が立ち込め、カエデの葉が色づいて来た。

秋か。

Paul McCartney “EGYPT STATION”

Paul McCartney “EGYPT STATION”

1. Opening Station
2. I Don’t Know
3. Come On to Me
4. Happy with You
5. Who Cares
6. Fuh You
7. Confidante
8. People Want Peace
9. Hand in Hand
10.Dominoes
11. Back in Brazil
12. Do It Now
13. Caesar Rock
14. Despite Repeated Warnings
15. Station II
16. Hunt You Down / Naked / C-Link

Released on Sep. 7, 2018

9月7日に発売されたポール・マッカートニーの新作アルバム。
ジャケットは、ポール自身が描いた絵だそうだ。
(ジョン・レノンも自身の絵をジャケットにしたものがあったが)

私のブログでは、どちらかというと学生時代から何十回、何百回と聴いて来たロックやジャズのアルバムを紹介している。それは、その時(時代)はどうだったか。私的体験や社会情勢などを交えながら書くことが多い。

だが、アップトゥデートな音楽もいつも聴きたい、知りたい、と情報を集めているが、なかなかこれといった情報源を見つけきれていない。

ひょんなことから知ったポールの新譜。
発売と同時にアップするのは初めてだ。
(これからはこういうのもあっていい)

ポールということでまず聴いてしまうのは、
2. I don’t know、4.Happy with You、12.Do it now、14.Despite Repeated Warnings など、バラード系。

第2回「G1関西」 in 奈良(2日目)

(右より)松本紘(理化学研究所理事長)、山極壽一(京都大学学長)、秋山咲恵(株式会社サキコーポレーション代表取締役社長)

セッションは2つの全体会と3つの分科会(3×4テーマで12)。
分科会はどれも参加したいテーマばかりでどれにしようかと迷うものばかり。

最初の全体セッションは、「関西がリードするテクノロジーの進化」。
パネリストは、松本紘(理化学研究所理事長)、山極壽一(京都大学学長)。モデレーターは、秋山咲恵(株式会社サキコーポレーション代表取締役社長)。

・ 関西がリードする、再生医療(iPS)、AI、SiC(シリコンカーバイド)
・ 京都を代表する企業=特色ある企業が伸びる
・ 東京の企業=「日本を背負っている」との思い
関西の企業=小さく始めて、世界を目指す
・ 日本人でノーベル経済学賞が出ないのは人間科学を低く見ている
・ 社会をどこへ行くか予測するビジョンが足りない(未来社会の構想)
・ 理研の強み=科学と人文社会学がリンクする
・ 日本人自身が、日本文化の本質を知り、良さ、特徴を語ることが重要
・ 分野を超えた「変人の集いの場」が必要(シリコンバレーのように)

(右より)矢崎和彦(フェリシモ代表取締役社長)、山田岳人(株式会社大都 代表取締役)、山田邦雄(ロート製薬会長兼CEO)、末松弥奈子(ジャパンタイムズ代表取締役会長)。

第2部分科会
「関西オーナー企業の継続的なイノベーション」
パネリストは、矢崎和彦(フェリシモ代表取締役社長)、山田邦雄(ロート製薬会長兼CEO)、山田岳人(株式会社大都 代表取締役)。モデレーター末松弥奈子(ジャパンタイムズ代表取締役会長)。

・ オーナー社長は、会社のミッションだけでなく、事業を超えて30〜50年先を考えることができる
・ 3社共通しているのは、CSR。社会や地域への貢献に熱心。フェリシモの森基金、東北震災被災者の子供教育支援(ロート製薬)、子供達の工具でモノづくりイベント(14000人)DIY文化の創出(大都)など。
・ 理念に対して、担ぐ人(社員)が入れば、担がれる役も大切である
・ 市場を作る、社会を築く、という思いが大切

ランチワークショップでは、なんと小久保裕紀さん(元・福岡ダイエーホークス、読売ジャイアンツ、侍ジャパン代表監督、NHK解説者)と同じテーブルだ。

小久保さんは、ゲストではなく参加者の一人として参加されている。この学ぶ姿勢なので、一流選手であり、代表監督となり、NHKの解説者としても活躍されているのだと納得。

テーマは「万博を起爆剤として、関西だカエラ可能なイノベーションを起こすには」。10人それぞれが順番に考えを述べ、意見交換する。

(右より)芝川能一(千島土地株式会社 代表取締役社長)、椿 昇(京都造形芸術大学教授・現代美術家)、御立尚資(ボストン コンサルティング シニア・アドバイザー)。

第3分科会
「アートはいかにして地域と人々に価値を与えるのか」
パネリストは、芝川能一(千島土地株式会社 代表取締役社長)、椿 昇(京都造形芸術大学教授・現代美術家)、モデレーターは、御立尚資(ボストン コンサルティング シニア・アドバイザー)。

・ アートで町づくりをすることは、うまく行くと成果はとてつもなく大きい
・ イベント企画・資金・行政の3つのコラボレーションが大切
・ コンテンポラリーと骨董は一緒(感性が大切)

「アートの豊岡」を目指す住人として、質問をする。

「行政と民間の役割分担は?」
「多くの市民の理解と賛同を得るには?」

ヒントをいただいたのは
・「テロワール」を大切にすること。フランス語でTerroirとは「土地」のこと。もともとはワインや茶など、生育地の地理、地勢、気候による特徴を指し、その土地特有の性格を意味する。つまり、土地に根ざすものを大切にしろ、ということだ。

・「民間」だけではダメで「行政」も大いに関わり、地元住民の言葉で語り、身近に楽しむことが大切。

・ 大阪の「北加賀屋クリエイティブビレッジ(KCV)」に注目。名村造船所大阪工場跡地にアーティストが集まり、「芸術・文化が集積する想像拠点」を目指す。

(右より)菅谷文則(奈良県立橿原考古学研究所 所長)、塩沼亮潤(慈眼寺住職)、藤沢久美(シンクタンク・ソフィアバンク代表)。

第4分科会
「関西における修験の歴史〜異なる3つの聖地をつなぐ古道の神秘を聞く」
パネリストは、塩沼亮潤(慈眼寺住職)、菅谷文則(奈良県立橿原考古学研究所 所長)。モデレーターは、藤沢久美(シンクタンク・ソフィアバンク代表)。

修験道の修行は、5/3〜9/3までの4ヶ月間、毎日、1日16時間(48km)を歩き、食事は、おにぎりと時々精進料理をいただく。2ヶ月ぐらい経つと血尿になり、道端の花が愛おしくなる。

・ 修験は、ホスピタリティだ。(サービスではない)
・ 誰でも自分が一番大切。だから相手に敬意を持つことが大切。そうすればホスピタリティの好循環が始まる。

(右より)鈴木寛(東京大学・慶應義塾大学教授、文部科学大臣補佐官)、藤沢久美(ソフィアバンク代表)、山田邦雄(ロート製薬社長)、掘義人(グロービス経営大学院学長)

第5部全体会
「万博を起爆剤にして描く関西の未来」
パネリストは、鈴木寛(東京大学・慶應義塾大学教授、文部科学大臣補佐官)、藤沢久美(ソフィアバンク代表)、山田邦雄(ロート製薬社長)。モデレーターは、掘義人(グロービス経営大学院学長)。

ランチワークショップの各テーブルの結論の発表。
私たちのテーブルは「大阪人の人なつこさをデジタル化し発信する」。小久保さんに代表として発表してもらう。(小久保さん、困惑気味でしたが)

みんなが心で頷いていたのは、「関西はひとつ」ではなく「関西はひとつ、ひとつ」という現状。(課題も多い)

鈴木寛氏からは
「2021年には文化庁が京都に移転する。文明論、文化論、幸福論をもっと活発に関西発でやってもらいたい」とのメッセージが。

「交流会ディナー」

中川げん奈良市長の締めの言葉で第2回「G1関西」が終了。

グロービスで学んだ時からの知人や、G1を通じて知り合った仲間、また、誰もが知っている大手企業の経営者の方たち、ベンチャーの若手起業家、著名な政治家、学者の方たち。G1だから出会い、語れる、触れ合える。

G1に感謝。

G1の基本理念
(1)批判よりも提案を
(2)思想から行動へ
(3)そして、リーダーとしての自覚を醸成する

 

第2回「G1関西」in 奈良(1日目)

掘義人 G1代表理事、グロービス経営大学院学長

第2回「G1関西」に参加する。

「G1」とは、政治・経済・文化・科学・環境・医学・スポーツなど各界のリーダーが集まり視座を広げ、意見交換し、日本や世界の将来を考える場。

「G1地域会議」は日本を4つのブロックに分けて、それぞれの地域で4年に一度開催する。「G1関西」は、2014年に大津市についで2回目となる。

私は、2001年〜2005年までグロービスで学び、堀さんとの接点でG1の招待状をいただいている。(2006年に堀さんを豊岡にお招きし、講演会を企画したが懐かしい)

国際高等研究所

今回の「G1関西」のテーマは、2025年の関西での国際万博の誘致を念頭に、歴史、テクノロジー、インバウンド、ものづくり、食と文化、大学改革、アートなど、関西の特徴をどう活かすかである。

まずは、「けいはんな学研都市」を訪問し、最新テクノロジーの創出の場を見学。

松本 紘理化学研究所理事長(左から2人目)

松本紘 理化学研究所理事長、及び、理研の研究員の方達より「けいはんな学研都市」計画から今日の発展までの経緯の説明がある。

大学学部単位の縦割りの研究ではなく、学際を超えて連携をする理研の優れた成果を知る。東大、京大などの研究成果をはるかに凌ぎ、世界トップクラスのMIT、ハーバード大、スタンフォード大、オックスフォード、ケンブリッジ大に匹敵する研究成果を目指すとの話を聴く。心強いワクワクするメッセージでした。

アンドロイド ERICA(エリカ)

人工知能の研究とアンドロイド。

「美し過ぎるアンドロイド・ERICA(エリカ)」と会話する。
自然な会話に驚きだ。

この次は、実際のiPS細胞を顕微鏡で見る。毎日のようにiPSの話題を見聞きするが、実際に観察できるのは、貴重な体験となる。

 

興福寺

「けいはんな学研都市」からバスで移動し、奈良市内の興福寺。

今度は、歴史・文化である。

興福寺国宝館

興福寺国宝館の特別拝観。

国宝・阿修羅像をはじめ、G1関西のメンバーのために一般の閉館後、ゆっくりと説明も聴きながら拝観させていただいた。

日本料理「夢窓庵」

レセプション・パーティは、日本料理「夢窓庵」(ミシュラン2つ星)とモダンスパニッシュの「akordu(アコルドゥ)」

隣り合わせた2店を行き来しながらの贅沢なディナー。

堀さんと川島宙(かわしま・ひろし)シェフ

アコルドゥの厨房はオープン。

シェフやスタッフの人たちが調理しているのが見える。ガラス張りで外も中も繋がっているとても気持ちいい空間が印象的。

料理はもちろん超・美味です!
「ゴ・エ・ミヨ]2018年版のシェフ賞を受賞。

次回の奈良では、必ず寄りたいレストラン。

「カフェ エトランジェ・ナラッド」。観光センター「ナラニクル」内。

「G1」前日だというのに、まだまだ夜は続く。
2次回は『カフェ エトランジェ・ナラッド』

奈良観光センター「ナラニクル」内にあるカフェ。こちらのオーナー佐藤氏(株式会社バルニバービ社長)もG1メンバー。

「昭和ナイト」で踊る

カフェ・エトランジェ・ナラッド名物(?)の「昭和ナイト」!!

店内を昭和歌謡で埋め尽くす「昭和ナイト」。佐藤社長自身がDJとな理、マイクを持ち唄い、ボルテージは揚がりっぱなし。

まだ明日が本番だというのに、みんなすごいエネルギーだ。
昼間の議論と違う一面が現れて、また、これも面白い。

ということで、まずは前夜祭が終わる。

長くて、凄くて、美味しくて、感動の1日でした。

 

Eric Dolphy “FAR CRY !”

Eric Dolphy “FAR CRY !”

Eric Dolphy : bass clarinet, flute, alto sax
Booker Little : trumpet
Jaki Byard : piano
Ron Carter : bass
Roy Haynes : drums

1. Mrs. Parker of K.C.
2. Ode to Charlie Parker
3. Far Cry
4. Miss Ann
5. Left Alone
6. Tenderly
7. It’s Magic

Recorded  on Dec. 21,1960

36才で逝ったエリック・ドルフィー。
よく「夭折の天才」と言われるが、亡くなって50数年経った今も、永遠に聴きたいドルフィー。確実にジャズファンの中に生きている。

翌1961年の名盤   “AT THE FIVE SPOT”    “LIVE AT THE FIVESPOT VOL.2”  にも劣らない素晴らしい演奏が聴ける。ファイブ・スポットと同様、トランペットのブッカー・リトル との共演盤。

ジャッキー・バイアード(P)、ロン・カーター(b)、ロイ・ヘインズ(ds)と大物揃いのリズム部隊。

“Left Alone” でのドルフィーのフルートは格別だ。

利賀村(その2)〜演劇の舞台・建築・施設

円形劇場

『世界の果てからこんにちは』の舞台になった「円形劇場」。

設計は建築家・磯崎新氏。

ギリシャ悲劇が演じられたギリシャの円形劇場がモチーフになっているのだろう。観客席から見た舞台の後ろには池。池の向こうには、向こう側の山が背景となっている。ちゃんと利賀村なのである。

新利賀山房

こちらは「新利賀山房」。
こちらも磯崎新氏の設計による。

この会場で行われるイベントの開始を待つ観客。
山に囲まれ、利賀村の茅葺き屋根に合わせた外観は、まるで村の祭りを見物に来た人たちにようだ。

総合案内所。開演を待つ平田オリザ氏、中貝豊岡市長夫妻と妻。

利賀芸術公園の中央にある「総合案内所」。
SCOTのオフィス、休憩所、トイレなどが集中して設置してある。

戸建になっている宿泊施設

ユニークなデザインの宿泊施設。1階部分は駐車場にも、テーブル、ベンチを置いてミーティングもできそう。ドアから中に入って2階に一部屋がある。

ゲストハウス

演劇祭のシーズンには、世界から多くのアーティストや演劇関係者やファンがやってくる。舞台ばかりでなく、長期滞在型の宿泊施設は必須。

地元行政や経済界からの支援の積み重ねか。インフラの整備は一朝一夕でできるのものではない。40年の歳月の重みを感じる。

鈴木忠志トーク(新利賀山房のステージ)

チラシには「毎夏恒例、鈴木忠志が観客の皆さんのどんな質問にも答えます」とある。

出だしから、「はい、質問は?」で始まるのでびっくり。

満員の会場のアチコチから手が上がる。鈴木さんがアトランダムに指を差して質問者を決め、その問いに答える。

「女優の声の低いのはなぜ?」「異なった言語(中国語、マレーシア語、日本語など)で演じる芝居の意図は?」「後継者は?」など具体的でストレートな質問が立て続けにでる。

全ての質問に真摯に答える鈴木氏。
具体的な質問ではあるが、その背景、その奥に潜む本質を語る鈴木氏。

結果として、鈴木忠志の演劇論、日本論、世界観そのものが浮き上がる。

利賀村(その1)〜多くの出会いに感謝する夜

豊岡を出発して、富山県南砺市利賀村に到着したのは翌日の午後。
チェックインして宿泊する「天竺温泉の郷」の部屋から見た夕焼け。

『世界の果てからこんにちは』のシーン。
円形劇場に花火があがる。

右側には、YKK(株)の吉田忠裕氏、その向こうに平田オリザ氏。

超満員の円形劇場。
事前の予約が必要だが、ともかくやって来た熱烈ファンのために数十名の人たちが立見で見学。

手前から田中幹夫氏(南砺市市長)、邑上守正氏(前武蔵野市市長)、村椿 晃氏(魚津市市長)

まだかまだかと開演を待つ観客。

南砺市市長の田中氏は利賀村出身。
鈴木忠志率いる早稲田小劇場が引っ越して来た時は中学生だったそうだ。

『世界の果てからこんにちは』の終演後は、観客全員に樽酒が振る舞われる。

鈴木忠志さん、YKK(株)吉田忠裕氏、1970年代に東京で観た早稲田小劇場時代からの役者蔦森皓祐氏との夢のようなツーショット。

観劇やパーティでご一緒させていただいたYKK(株)取締役の吉田忠裕氏。YKK(株)の2代目社長として世界70ヶ国に進出する大社長。

今年3月に経営の第一戦はバトンタッチされ、現在は富山県の地域振興に力を注いでいらっしゃる。

来年、利賀村と宇奈月温泉を舞台に開催される「シアター・オリンピック2019」の実行委員会の会長。

吉田氏のお考え、実行力、そしてそのお人柄に大きな感銘を受ける。
経営者として、そして人生の先輩として「人間力」の大切さを学び、これからの私の行動に大きな刺激を受けました。

夜公演のあとは、劇団SCOTの関係者、役者さんなどとの交流会。

鈴木忠志さんとの再会、早稲田小劇場で観た芝居との再会、利賀村を支援する地元市長さんたち、平田オリザさんや演劇人の人たちとの会話。

嬉しさと感動の長い1日がやっと終わろうとしている。

『ディオニュソス』と『トロイアの女』〜鈴木忠志の構成・演出

『ディオニュソス』
構成・演出:鈴木忠志
原作:エウリピデス

開場と同時にトップで会場へ。すると鈴木さんご自身が「この席がいいよ。こっち、こっち」と手招きいただく。

天にも昇る思いだ。(笑)

1978年、東京・岩波ホールで観た『バッコスの信女』が、その後題名を『ディオニュソス』として演じられている。

真っ暗な舞台に一筋の光があたる。
開演前、すでに劇は始まっている『トロイアの女』。

こちらも1970年代に東京で観劇した演目。岩波ホール演劇公演の第1回目として演じられた。エウリピデス作のギリシャ悲劇。

スズキ・メソッドで訓練された俳優が演じる舞台は独特。

現代生活のなかで退化してしまった身体感覚を意識化し、演技に活かそうと言うスズキ・メソッド。農耕民族である日本人の所作、特に下半身の動きに注目。

鈴木忠志の演劇を解説するのは難しい。ギリシャ悲劇の神話の世界と現代の日本の世相、心情とが交錯しながら芝居は進む。

※ 鈴木忠志の舞台を言葉で説明するのは、今の私にはまだまだだ。

42年ぶりの利賀村へ〜劇団SCOT

ここは富山県南砺市の渓谷。
あと10kmで利賀村に到着する。
劇団SCOTのサマーシーズン公演の観劇である。

1976年、鈴木忠志率いる早稲田小劇場が突然、利賀村に拠点を移す。その第1回公演にこの利賀村に来て以来、42年ぶり。

その後、SCOT(Suzuki Company of Toga)として利賀村にて演劇活動を行なってきた。

4月に鈴木忠志さんが「舞台芸術財団演劇人会議」(豊岡市KIAC)に来られた時に、「利賀村においで」とお誘いを受けたのがきっかけ。それでなくても、行きたい、行きたいと思っていましたが。

会場は巡回バスが走っている

会場は、利賀山房、野外劇場、岩舞台、利賀大山房など、芸術公園として歩いて巡回もできるし、巡回バスに乗って移動もできる。

鈴木忠志(早稲田小劇場)が引っ越してきた当時は、村の人口は1500人だったそうだが、今は500人。加速しながら過疎が進んでいる。

「みんな東京へと向かうのに、東京から誰が何のために来たのか」と当所、村民の人たちは訝しんだそうだ。(そりゃあ、そうだな)

利賀村の「体育館」は「利賀大山房」となり、ここでも公演される。

もともとある村の施設を使用し、芝居もできる空間に舞台や客席が設えてある。

「利賀大山房」から百瀬川を渡った所にある「グルメ館」。

グルメ館の中は、麺類、カレー、パン類、中華、デザートなどどれも丁寧に調理された美味しい食事ができる。

特に、中華は北京郊外の「古北」から料理人が来て、本場の北京ダックや餃子、炒飯など舌鼓を打つ料理がズラリ。

夜は、野外劇場で『世界の果てからこんにちは』

まさに「夢を見てるのか」と思うほど、幻想的シーンが続く。

1991年から、毎年演じられる人気の演目。照明器具会社の社長の友人である江戸時代から続く「花火師」の一言からこの芝居ができたそうだ。

「ここで花火を使った演劇が考えられませんか」

花火の上がる芝居が観られるのは世界でここだけだろう。
野外、劇場のある環境、住民の理解、消防法などの様々な規制をクリアしないと実現しない。

「日本人の特質は何か」を問題定義する意図で鈴木忠志の作・演出。

コラージュの手法で、第二次世界大戦の敗戦、戦後の復興での日本人の精神性を表現する。

戦後の一つ一つの記憶を切り取り、非日常的世界を創出する。
慣れてしまった日常への疑問、別の視点を目覚めさせる。

私がかつて観た「早稲田小劇場」は、まさにここに生きていた。